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ジェネリック医薬品の密輸を題材とした大ヒット映画「薬の神じゃない」で描かれたように、中国では高額な医薬品費が疾病治療の障壁となっている。
IT大手テンセント出資で、オンラインで保険・共済事業などを手がけるインシュアテック企業「水滴(Waterdrop)」が行ったユーザー調査では、がんなどの特定の重大疾患に対し多大な効果が期待できる新薬のうち、保険の適用範囲外となるものについて、90%以上の患者が「費用を負担できない」と回答し、44.6%が実際に薬の使用を断念するか、使用を減らしている。
「薬が高くて使いたくても使えない」という問題について、水滴では医療保険と医薬品販売を組み合わせた新形式のプロジェクト「好薬付」を始動した。
リリースして4カ月になる好薬付について、水滴の発表した最新のデータでは、すでに中国国内の200都市にある1100店舗のDTP型薬局(DTP=Direct To Patient、メーカー直販)で取り扱っており、累計3万人にサービスを提供している。
消費者市場向けの「集中購買」
好薬付のビジネスモデルを簡単に説明すると、好薬付の有料会員となったユーザーは同サービスが適用範囲とする重大疾患に罹患した場合、新薬、重大疾患治療薬、慢性疾患治療薬に関する値引きなどのメリットを享受できる。100種類もの抗がん剤に適用されるほか、薬品購入の自己負担分の軽減や、薬品の無料提供、新薬の優先使用、薬剤師による無料カウンセリングなど、従来は保険金としてカバーされたものが医薬品に置き換わっている。
中国政府は近年、医薬品や医療資材の集中購買実施や新薬の保険適用を急ぐなどして薬品価格を抑え、受診の負担を軽減するよう試みてきた。それでも保険の適用外となる医薬品は数多く、重大疾患に罹れば治療薬は全て自己負担というケースもある。とくに抗がん剤や希少疾患の治療薬は、とても一般消費者が負担できる額ではない。
好薬付がカバーする医薬品は保険適用外の物も多い。さらに水滴の三大事業である保険商品販売プラットフォーム「水滴保険商場(Waterdrop Insurance Mall)」、医療共済プラットフォーム「水滴互助(Waterdrop Mutual)」、医療費のクラウドファンディングプラットフォーム「水滴筹(Shuidichou)」とも連携し、疾患罹患前から罹患後に至るまでの出費を網羅する。
水滴の創業者でCEOの沈鵬氏によると、同社のクラウドファンディング事業で集まった資金の大部分が医薬品購入に充てられており、その需要は明らかだ。そこで水滴は消費者市場向けに医薬品の集中購買を実行しようとしている。
水滴と製薬企業が提携すれば、水滴のプラットフォームで取り扱う保険商品のユーザー1億4000万人に対し、製薬企業は医薬品の値下げを提供できる。好薬付が公開している医薬品リストを参照すると、1商品につき500~600元(約7900~9500円)安い設定となっている。
持病や既往歴を持つ人向けの保険を開発
持病や既往歴を持ちながら加入できる医療保険の一つとして、好薬付の商品設計は注目に値する。しかし、持病や既往歴を持つ人の保険に対する意識は相当に高く、保障と利益のバランスを見出すのは難しい。
好薬付事業を統括する郭南洋氏によると、水滴は今年になって医療データセンターを設立し、患者グループのデータ分析を行うなど、川上・川下のリソースを統合して新たな価値を創出していく計画だ。同氏は「一例を挙げると、水滴のデータでは、肺がん患者の43.6%が分子標的薬のゲフィチニブやEGFRチロシンキナーゼ阻害薬イコチニブなどの新薬を治療に用いている。その他の分子標的薬や免疫抑制剤についても使用率を割り出せるため、我々や製薬企業にとってよい参考材料になる」と述べる。
健康体および半健康体の人を対象とした保険業界はすでにレッドオーシャンだ。反対に、持病や既往歴のある人を対象とした保険は多くの企業が足を踏み入れていない領域であり、水滴が全力で開拓している部分だ。
郭南洋氏によると、水滴のクラウドファンディングで治療費を募っている人や共済に加入している人、好薬付に加入している人など、すでに治療中のユーザーについては、保険会社と共同で持病のある人向けの保険商品を開発中で、費用への不安を和らげながら、治療薬の使用に踏み切れるようサポートする。(翻訳・愛玉)
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