無名だった「原神」が中国トップクラスのゲームとなった理由

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2021年は日本でも人気の「miHoYo(米哈遊網絡科技)」のオープンワールド型アクションRPG『原神(Genshin)』について、中国においても話題や人気が継続し、36kr中国版でも報じられた。2020年9月のリリースから1年後の2021年9月には、App StoreとGoogle Playにおける売上高が合計20億ドル(約2220億円)に達し、2021年末には『PUBG Mobile(和平精英)』と『王者栄耀』に続く3番目の売上高を記録したゲームとなった。

大ヒットゲーム『原神』、リリース1年でモバイル版約2220億円を売り上げ

数字がすごいだけではない。原神は中国のゲーム史においてマイルストーンとなるタイトルなのだ。任天堂の『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド(ゼルダbotw)』に非常に似ているということで特に中国の任天堂ファンから不満が長期間噴出したが、一方でゼルダbotwにそっくりな世界をベースに魅力的な二次元キャラクターを多数加えたことで、新たな魅力を作り出し、中国だけでなく、日本で世界で広告を展開し世界中でファンを獲得している。日本のアニメ・ゲームコンテンツのファンが原神のファンになるというこれまでになかったことが世界各地で見られる。

原神の注目度グラフ

これまでも中国発の代表的な二次元(日本的)ゲームでは、日本の「艦隊これくしょん(艦これ)」のブームに乗った『戦艦少女R(2014年。リリース当初は戦艦少女)』が「幻萌網絡」からリリースされ、また2017年には『アズールレーン』が「蛮啾網絡(Manjuu)」からリリースされた。中国メーカーが日本的な萌えゲームの模倣ができると知らされたタイトルだ。2016年には、「ネットイース」が平安時代を舞台にした和風の世界観を描き、多数の日本人声優を採用した『陰陽師』をリリース。中国メーカーが日本の世界観のオリジナルゲームが作れることを知らしめた。そして原神ではオープンワールドのアクションRPGというゲーム性と世界観、それに2次元の萌えを融合し、世界でファンを獲得している。

原神が中国で人気の要因は何か、DataEye研究院はこう分析している。若者に人気の2次元である以外にもゼルダbotw譲りのオープンワールドで何をしてもいいというプレイスタイルが、今の「佛系」と言われる無気力な若者にちょうどよいという点だ。また他人と一緒に遊ぶ王者栄耀やPUBG Mobileと比べ、空き時間にちょっと遊ぶことができる著名タイトルという点も挙げられる。

とすると課金方法も競技性のあるPUBG Mobileや王者栄耀と異なってくる。原神は誰かと対戦し生き残ることを主としたゲームではなく、のんびりと世界を探索するゲームだ。原神はだいたい20日に1度アップデートを行い、アイテムや新マップを追加、そのタイミングで大きな課金の山が来る。9月2日前後にアップデートされたときには「雷神マップ」が新たに追加され、この日1日のiOSプラットフォームでの課金額が世界で600万ドルに。これは原神の1日あたりの売上では最高額だ。

売上を増やすにはユーザー数を増やす必要がある。中国に限らないが、リリース当初は様々なメディアが話題にすることから多くの人が関心を持ちインストールするが、時間が経過すると報道がなくなるのでユーザー数は口コミ経由での増加しか頼れなくなる。日本でも原神の広告を展開しているように、中国でも遊んでもらうための仕掛けを行っている。

原神リリースの2年前となる2018年8月初旬から、当時『崩壊3rd』をリリースしていたmiHoYoが原神のオフィシャルブログアカウントを開設し、WEBコミック「原神project」を掲載。崩壊3rdファンを食いつかせた。2019年8月にはPlayStation4向けの原神を発表。ここで前述したゼルダbotwに似ていることで任天堂のファンが怒り、結果として知名度を高めた。リリースに向けて、2次元ファンの多いビリビリでゲーム動画のプロモーションビデオを小出しに流していった。

2021年3月のKFCコラボキャンペーンで話題を作った

そしてリリースの2020年9月を迎える。この9月の中秋節・国慶節連休をひかえたタイミングで、原神の武陵源(張家界)をテーマにしたマップの動画をビリビリや抖音や微博など中国の各プラットフォームで公開。これが大好評となり、新規ユーザーを多く獲得した。さらに12月には、中国企業としては初めてとなるGoogleとAppleの2020年ベストゲームに選出され話題になりユーザーを増やした。

武陵源風原神プロモーションビデオ

その後は中国Google Playストアが使えないことを逆手に、シャオミやファーウェイなどスマートフォンメーカー各社のAndroid向けアプリストアと小出しに提携し話題を出していく(別メーカーのアプリストアを利用すれば問題なくインストールができる)。また2021年6月からは抖音のインフルエンサーを活用し、知名度を高めユーザーを増やし今に至る。

原神は世界で評価されたゲームだ。「tech otakus save the world」というスローガンのmiHoYoだが、技術に胡坐をかくことなく、コンスタントに話題作りをして多くのユーザーを集めた。中秋節・国慶節のタイミングに絡めたプロモーションビデオを出して効果があるということは、春節前に春節を想像できるプロモーションビデオを流しても中国人は食いつくことだろう。

(参考:https://36kr.com/p/1544862543423494)

作者=山谷剛史

アジアITライター。1976年東京都出身。東京電機大学卒。システムエンジニアを経て、中国やアジアを専門とするITライターとなる。単著に『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』などがある。

中国のモバイルゲーム、世界で存在感増す

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