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無数のドローンで花、動物やメッセージなど様々なアートを夜空に描くドローンショー。日本でも開催されることはあるが、中国ではより頻繁に開催されており、その技術や規模は年々向上している。2016年頃にドローンショーを始めたばかりの時は100機未満で行われていたが、現在は1回のパフォーマンスで少なくとも600機で、時には2000機を超える大規模な演出もある。
世界におけるドローンショーの市場規模は2021年時点で1億7000万ドル(約354億円)で、うち中国の市場規模は1億400万ドル(約156億円)と、世界市場のおよそ6割を占めている(QY Research調べ)。また、2022年末時点で、中国のドローン運営会社は1万5000社、登録されたドローンの数は95万機あり、年間の売上高は1170億元(約2兆4000億円)に達しているる。さらにドローン運営市場も成長し、2024年までに1600億元(約3兆3000億円)に達するという(深センドローン産業協会の発表より)。
ここまで中国でドローンショーが拡大したのは、中国は世界最大のドローン量産国である以外にも、テクノロジーに憧れがある風潮と、斬新なマーケティングとエンターテインメント性、それに広告価値が大きいことが背景にある。
ゼロコロナの反動で過去最多となったオフラインイベント
ゼロコロナ体制の反動により、今年は中国各地で野外フェスなどのオフラインイベントが過去最多となるほど開催され、ドローンフォーメーションパフォーマンスも爆発的に増加している。広東省珠海の長隆海洋王国、陝西省西安の唐芙蓉園、浙江省杭州の宋城演芸など、一部の場所ではドローンショーが日常的なイベントとなっている。
ドローンショーが増えた背景には運営企業のノウハウが培われたという理由に加えて、政策面での奨励により、通常1~2週間かかった承認プロセスが数日で済むまで、時間が大幅に短縮された。
安定したドローンショーの実現に安全性、自動化、インテリジェンス、ネットワーキングの技術が必要であり、また毎日同じ場所でのドローンショーを行うニーズに応え、充電も含め自動化の技術が必要だ。しかし、ドローンショーなど編隊飛行に特化して研究開発を行う企業はそれほど多くはない。有名な運営会社は「大漠大智控」「億航智能(イーハン)」「高巨創新(深セン市高巨創新科技開発)」「一飛智控(天津)科技」「上海千机創新文旅科技集団」の5社で、各社のドローンショー関連事業で年3000万~7000万元(約6億〜約14億円)程の売上がある。このうち億航智能は米ナスダックに上場し、一飛智控~と上海千机~はシリーズBで資金調達を完了している。また空飛ぶクルマこと電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する億航智能を除く4社はドローンショーが主な事業となっている。
著名企業から新興企業までがドローンショーの取り合い
有名な企業同士の競争もあれば有名でない無数の企業による競争もあり、有名企業でないほうが当然安い。
相場は有名企業では1機1飛行あたり700~800元(約1万4000〜1万6000円)、安い企業では1機1飛行あたり100~200元(約2000〜4000円)となる。パフォーマンスの長さが15分だとしても値段は変わらず、1000機によるパフォーマンスとなれば高い場合、1機あたり800元×1000機=80万元(約1600万円)の売上となる。企業や組織がドローンショーで広告を依頼し、描いたイラストの見栄えが良くなかったり、ドローンが落下してしまったりするとブランドイメージに大きなダメージを与えることになるので、著名企業や大手企業に依頼するのが一般的だ(実際年に何度か無数のドローンがコントロール不能で落ちてニュースになることがある)。
前述の大漠大智控は、CCTVの春節前の人気番組「春晩」で2019~2023年にかけて毎年ドローンショーを行ったほか、2020年のドバイ万博中国パビリオンでもドローンショーを行い、また3051機を飛ばした同社のドローンショーはギネス記録となった実績がある。そうした実績から同社へのショーの依頼は増えている。
先日開催されたドローンフォーラムにおいても、遠方の他省の政府職員や大手企業がドローンショーの打診をしに同社のブースにやってきた。こうした打診を多く受け、大漠大智控は春節以降週に2~3回のペースでドローンショーを行うようになり、さらに5月以降は毎日のように行っているという。そうするとドローンショーの運営による売上もうなぎ上りになるが、その一方で同社のドローン製品の売上も大幅に増加した。
ドローンショーは深センをはじめ省都クラスまでの一線都市、二線都市で主に行われている。よく開催されているところでは住民の目が肥えていて、よりクリエイティブなドローンショーを提供していく必要がある。一方でそれより三線都市以下の地方都市ではまだ珍しいため、ドローンショーで住民に新鮮な驚きを与えられるだろうと大漠大智控が考えている。加えて米国、日本、韓国、英国、オーストラリアなど中国国外の約20の国と地域に事業展開を進めていて、今後も伸びていきそうだ。
(作者:山谷剛史)
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