海外発の3Dデジタル技術、日本企業とタッグで市場浸透 大手の活用続く

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3Dデジタル化ソリューション(デジタルツイン)を提供する中国のテクノロジー企業「四維時代(4DAGE)」は2024522日、日本の事業パートナーである「ジオサイン株式会社」と共同で3Dカメラ「4DKanKan」シリーズの新製品発表会を開催し、本格的に日本市場へ進出すると発表した。

4DAGE201410月に設立され、一貫して人工知能(AI)による3Dデジタル化技術の開発と実用化に取り組んできた。19年には同社初の3Dカメラを発売し、それまで海外の大手企業が独占していた3Dカメラ市場に切り込んだ。幅広い顧客の需要に応じた製品は全4種類、今回新たに日本市場に投入するのが最上位モデルの「4DKanKan Meta」だ。

「4DKanKan」シリーズのラインアップ

4DAGEの崔岩・最高経営責任者(CEO)によると、新製品の4DKanKan Metaは地上型レーザースキャナーとウェアラブルSLAMスキャナーを組み合わせた革新的なデータ取得方法を採用しており、身に着けて歩きながらのスキャンが可能になる。また、波長905ナノメートル(nm)の LiDARを搭載し、独自開発のアルゴリズムによる自動精度校正もできるため、センチメートルレベルの高精度を実現する。

発表会に登壇した崔岩CEO

世界で加速する3Dデジタル技術、日本での活用法は?

4DKanKanシリーズは、手軽に超高画質な3D画像の撮影・生成ができるうえ、屋内外問わず使用できることから、スマートシティや文化遺産のデジタル化、土木現場での測量、インフラの監視・保守、メタバースやエンターテインメントなど幅広い分野で活躍する。

4DAGEはグローバル化に積極的に取り組んでおり、中国だけでなく欧州や東南アジアなど世界30以上の国・地域で事業を展開している。日本でもジオサインを通じて顧客のニッチなニーズに向き合うことで、非常にユニークな活用事例が生まれている。

今回の新製品発表会では、日本の建設や出版など各業界大手が、実際に4DKanKanを活用したプロジェクトを紹介した。

日本で注目される活用法の一つに、伝統的な町並みや建造物のデジタルデータ化がある。4DKanKanはすでに、京都市の建造物の保存に貢献している。市内には多くの歴史的な建造物があるものの、設計図が残っていないものも多いため、震災などで損壊した建造物の復元が難しいという課題がある。

4DKanKanを用いれば、わずか数時間で建物全体をスキャンし、デジタルデータ化(BIMモデルの作成)が完了する。これが建物の修復や再建に役立ち、将来にわたり町並みを保全することにもつながるという。

中国では、世界文化遺産「開平の望楼群と村落」の建築データの収集から展示、さらには文化・歴史資源の管理までを請け負うなど実績も豊富で、その高い技術力と経験値には定評がある。

4DKanKan Metaを用いて当日のイベント会場をスキャンした図面

日本進出成功のカギは、共に開拓するパートナー企業の存在

4DAGEが、短期間で多くの日本の大手・中堅企業と新たなビジネスチャンスをつかんできた背景には、戸建て住宅向け地盤調査システムを提供するジオサインとの協力関係があるという。

ジオサインの代表取締役 成田芳文氏は、もともと建設業界の労働環境に課題意識を持ち、AIIoTなど先端技術を駆使して事業環境を抜本的に改革したいと考えていた。しかし、日本市場は成熟していて新技術の活用・アイディアは出てこない。そこで、技術的に突き抜けた商材を探して海外に目を向けるなかで、4DAGEの製品を発見し、両社の付き合いが始まった。

ジオサイン・代表取締役 成田芳文氏

成田氏が最初に驚いたのは、4DAGEの柔軟な発想と高レベルな技術による実現力だった。地盤調査や測量のデジタル化についての課題を相談すると、中国で開発中だという4足歩行の犬型ロボットにカメラを取り付けて測量する様子の動画を見せられた。日本企業にはない発想に感銘を受けたという。

成田氏は、この斬新な技術を独占してはもったいないと考え、取引先にもこの技術に需要がないか聞いて回り、崔CEOと毎週会議をして日本のニーズを細かく説明した。これは両社に二つのメリットをもたらした。ひとつは、想定していなかったような日本ならではの3Dデジタル技術に対するニーズが幅広い業界から次々と上がり、瞬く間に事業化を検討できるフェーズに入ったこと。もうひとつは、4DAGE製品の飛躍的な品質向上に役立ったことだった。

ジオサインが日本市場のレクチャーと顧客の発掘を行い、4DAGEが日本の顧客のニーズに合った製品を開発する。両社の協業は、海外企業の技術を活用することで、日本社会のDXを加速させる好例となるだろう。実際に4DKanKanを導入した日本企業はいずれもその品質を高く評価しており、将来的な活用に向けたロードマップを描く企業も多い。

両社は年内に日本で合弁会社を設立し、日本市場向けに開発を加速させ、販売体制の強化をしていく方針だという。

(取材:36Kr Japan、編集:田村広子)

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