デジタルヘルス・ソリューションを手がける中国企業「温致科技（Wonz Technology）」がこのほど、玉環市国有資産投資経営集団から資金を調達した。資金は、浙江省玉環市で生産拠点とマーケティングセンターの建設に充てられる予定だ

温致科技は2020年に設立され、タバコが健康に及ぼす害の軽減やニコチン依存症の治療を後押しするヘルステック企業だ。これまでにも、同社の杜欣CEOが共同創業者を務める泥藕資本（NEEO Fund）やXVCから計1億元（約20億円）超を調達している。

温致科技は「WONZ」ブランドで大きく分けて3種類のデジタルヘルス製品を展開している。ニコチン依存症向けの「尼刻停」シリーズ、紙状のハーブを加熱して、発生した蒸気を吸う「加熱式ハーブ蒸気発生器」、迷走神経刺激療法（VNS）と非侵襲式ブレイン・マシン・インターフェースの技術を採用した「VNS安眠器」だ。これらの製品を通じて、ニコチン依存症の治療や不眠症・不安症の改善といったソリューション、次世代のハーブ療法技術を提供し、健康問題の解消を目指している。

杜CEOは、ニコチン依存症向けソリューションを事業の軸に据えた理由について、中国だけでも3億人以上の喫煙者がいて、市場が大きな可能性を秘めているためだと説明した。また、リピーターを確保しやすく、継続的なユーザー獲得が期待できる点もポイントになったという。

喫煙者にとって、禁煙するうえで最も難しいのは禁断症状を克服することだ。同社の尼刻停シリーズは、ドーパミンの報酬メカニズムを利用してニコチン依存症の改善を図っている。

杜CEOによると、ニコチン依存症の人は体内に入ったニコチンが受容体と結合し、ドーパミンの分泌量が増えることで満足感が高まる。尼刻停シリーズは、ユーザーに禁煙を強いるのではなく、ドーパミンを増やす習慣を維持しながら、より健康的なライフスタイルを提供するものだ。まずは喫煙者の害を減らし、それから行動パターンを変えることで、完全な禁煙へ向かわせようとしている。

尼刻停シリーズは、喫煙による有害物質の吸入を減らす「浄化フィルター付きデバイス」、呼気の一酸化炭素（CO）量を調べる「呼気COチェッカー」、人工知能（AI）プラットフォームで構成されている。浄化フィルター付きデバイスでは一般的なタバコを使用することができ、呼気COチェッカーやデータと組み合わせることで、ニコチン依存症のモニタリングと介入が可能になる。

浄化フィルター付きデバイスは、火をつける代わりに独自に開発した温度制御技術「WHC（WONZ Heat Currents）」でタバコを加熱して蒸気を発生させ、燃焼によるさまざまな有害物質の発生を抑える。また、蒸気中の有害物質を濾過するフィルターも装着されている。

測定データによると、浄化フィルター付きデバイスはタバコに含まれるタールやホルムアルデヒド、一酸化炭素、重金属などを90％以上濾過し、有害物質の発生と吸入を効果的に減らすことができる。

同社は昨年7月、首都医科大学附属北京朝陽医院呼吸器・重症医学科チームの主導で、浄化フィルター付きデバイスに関する実験を終えた。その結果、被験者の56％が実験中に浄化フィルター付きデバイスで加熱したタバコのみを吸い、喫煙の欲求と禁断症状に関するスコアが下がった。また、約84％の被験者が「一般的なタバコとほとんど変わらない」と評価した。

温致科技は昨年までに、海外市場向けに電子商取引（EC）や決済、物流などの事業者登録を済ませ、オーストラリアやドイツ、日本などで販売を開始した。また、海南省に生産拠点を建設中で、デジタルヘルス分野の支援策が充実している海南自由貿易港の制度を活用し、今後の海外市場へのさらなる拡大を見据えている。

＊1元＝約21円で計算しています。

（翻訳・大谷晶洋）

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