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中国のAIスタートアップ「FancyTech(時代涌現)」は、2020年の設立以来、独自開発の画像・動画生成AIを使って、日用消費財や小売業界の顧客向けにAI生成による商品画像や動画を提供して、マーケティングコンテンツのスマート化と高度化を支援している。
同社の売上高は2024年に前年から倍増して1億元(約20億円)を突破した。取引先の数は1000社を超え、うちキーアカウントといえる重要顧客が半分以上を占めている。中国で次々に登場するAIスタートアップのなかで、FancyTechのように事業化で明確な成果を挙げている例はまだ少ない。25年も売上高の倍増を見込んでおり、3000万ドル(約43億円)に達する見通しだという。
今年2月には、シリーズB+で約1000万ドル(約144億円)の資金調達を実施した。至臨資本(GeniLink Capital)と既存株主の金沙江創投(GSR Ventures)が共同で出資を主導した。金沙江創投のパートナーで著名投資家の朱嘯虎氏は以前、FancyTechを「顧客のニーズに沿ったサービスを提供するPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を追求する優良な投資先」と評し、「「サービスの完成度が非常に高く、すぐに収益化できる」と高く評価した。
FancyTechのサービスは使いやすく、1クリックで画像や動画をアップロードすると、約1分間で商品販売用のショート動画を大量に自動生成する。生成されたコンテンツは、1クリックでECプラットフォーム「淘宝網(タオバオ)」や動画投稿アプリ「TikTok」、中国版インスタグラムの「小紅書(RED)」など各種プラットフォームに直接投稿でき、効率と効果の両立を実現している。
FancyTechは、各プラットフォームで人気を集めているコンテンツを広く学習・収集し、AIを使って全く新しい動画コンテンツを生み出す。さらに膨大なユーザーデータを分析して、ブランドがユーザーのニーズに合った商品紹介のコンテンツを最適なタイミングで配信できるようにしている。
注目すべきは、多くのスタートアップがAIによる業務の自動化・無人化をうたうのに対し、FancyTechはあえて異なる道を選んだことだ。同社は現在、主に法人顧客に特化しており、サービスの核となるのは「AIによる生成効率の最大化」と「人間による統合管理の併用」による、高品質なコンテンツ提供だ。
同社の空界CEOは、AIだけで顧客の要望を100%満たすのは難しく、7割から8割の完成度では顧客は満足しないと指摘する。そこでFancyTechはプロジェクトに介入するスタッフの割合を増やし、スムーズな納品と高い顧客満足度を両立させているという。
具体的な業務フローとしては、顧客の要望を分析するカスタマー担当が中心となり、タスクをFancyTechのプラットフォーム上に集う複数のクリエイターやスタジオに振り分ける。クリエイターたちは、FancyTechの提供する基盤モデルや専門特化モデルといったEC向け素材生成ツールを駆使し、コンテンツを制作。プロジェクト全体の進行管理と納品後の品質保証はFancyTechが一貫して担当しており、納品物のクオリティを保証する。空界CEOは「私たちが提供しているのはツールではなくコンテンツそのものであり、評価の基準は常にその“質”にある」と語る。
こうした「人とAIの協働モデル」による事業運営は、商用化の面で高い実績を上げており、そのサービスはアパレルやスポーツ、メイク、3C(パソコン、通信機器、家電)、ラグジュアリー商品にまで広がり、顧客は1000社を超える。24年には、中国企業として初めて「LVMHイノベーションアワード」を受賞したことでも注目を集めた。
FancyTechは中国国内市場にとどまらず、米国、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、ブラジルなど10カ国以上で展開している。現時点で中国国内と海外事業の比率はおよそ7対3だが、年内にはこれを半々にしたいと考えている。
*1ドル=約144円、1元=約20円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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