中国・食気生化、排ガス由来バイオ化学品を量産へ CCUS市場参入も視野
中国のバイオテックスタートアップ「食気生化(Gasgene)」がこのほど、上海科創知識産権基金や天創資本(Tianjin Venture Capital)から1億元(約20億円)以上を調達した。資金は主に製品のパイロット生産から量産化への移行に充てる。同社はこれまでに博遠資本(BioTrack Capital)やテンセントなどからも出資を受けている。
食気生化は2023年1月に設立され、炭素原⼦1個の化合物(C1化合物)から各種化学製品をつくる「C1化合物変換」とガス発酵技術を核に、工業排ガスを化学品や燃料、単細胞タンパク質へと転換する技術の開発を進めている。共同創業者の聞志強氏と汪慶卓氏は、博士課程時代に中国科学院合成生物学重点実験室で同じ教授に師事していた。両氏が所属していた研究グループはこれまでに100件余りの産業化プロジェクトに携わり、C1化合物変換およびガス発酵技術の研究開発で20年近い実績を有している。
2026年の中国政府の「政府活動報告」では、単位GDP当たりのCO2排出量を約3.8%削減する年度目標が初めて示された。排出量管理が長期目標から年度単位の政策指標へと移行するなか、産業排ガスを資源として活用する技術の重要性が高まっている。さらに、地政学的リスクの高まりにより、石油や脱脂大豆、魚粉などのコモディティの輸入依存度の高い資源の安定確保が課題となっており、代替原料の確立も重要なテーマとなっている。
こうした中、C1化合物変換やガス発酵の技術が、戦略的に大きな価値を持つようになった。食気生化のメンバーは、20年間にわたりクロストリジオイデス属の遺伝子組換えとゲノム編集の研究に携わってきた。この経験をもとに開発された複雑な代謝経路を持つ特殊な菌株は、30種類以上の酸、アルコール、エステル類を合成する能力を持つ。
「ハイテク技術を用いて付加価値の低いコモディティーをつくる」という開発理念に基づき、同社はブタノールを最初の製品に選ぶと共に、飼料用タンパク質の代替品も生産している。
ブタノールは代表的なコモディティ化学品で価格競争が激しいが、従来の石油由来製造では原料コストが全体の60%以上を占める。これに対し同社のクロストリジオイデス発酵法では産業排ガスを原料として利用できるため、原料コストの大幅削減が可能になるという。汪氏は「当社は、革新的な技術によってコモディティ化学品のコスト構造を見直し、競争の優位性を築いた」と強調する。
同社は2024年以降、石炭化学工業の排ガスを活用したエタノールや高級アルコール、単細胞タンパク質の製造に向けて、100トン級および500トン級のパイロットプラントを完成させた。複数製品を柔軟に生産できる体制を整えている。
今後は、コモディティやタンパク質の販売による売り上げに加え、CO2排出削減の取り組みも収益の拡大につながる見通しだ。試算によると、同社のバイオ生産技術でブタノールを製造すれば、石油由来のブタノールに比べ、1トン当たりCO2約4トンを削減できるという。将来的にはCCUS(CO2回収・貯留・再利用)市場に参入し、大規模な石炭化学工場や電力会社にCO2排出削減装置を供給することで、カーボンクレジットや排出量取引を通じた収益拡大も目指す。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)