構造そのものをセンサーにーー中国新興、光学式でヒューマノイドの「力覚」を刷新
ロボットの力覚センサーを手がける中国スタートアップ「智子力控(Sophone Force)」がこのほど、投資ファンドの中芯聚源(China Fortune-Tech Capital)から資金を調達した。資金は主に技術開発や小ロット生産ラインの建設などに充てられる。同社はこれに先立ち、浦東創投(PDVC)傘下ファンドからも出資を受けている。
2024年に上海で設立された智子力控は、光学技術を基盤とした人型ロボット(ヒューマノイド)向け力覚センサーソリューションを開発する。創業者の宋戈陽氏は「ヒューマノイド業界において、滑らかな動作の実現が今後の競争の焦点となる。力覚センサーはその差別化を左右する重要な要素だ」と語る。
主流の電気式から光学式へ
ヒューマノイドの力覚センサーは、電気抵抗の変化を利用したひずみゲージ式が主流となっている。複雑な弾性構造により6軸の力を個別に検出するが、各関節に独立した処理ユニットを設置する必要があり、配線の複雑化や電磁干渉といった課題が残る。
これに対し智子力控は、「構造そのものをセンサーとして使う」という独自のアプローチを採用した。弾性構造に光学部品を組み込み、デジタルツインを活用して力のかかり方を解析する仕組みだ。数十個の光センサーノードをロボットの「小脳」に相当する部分で一括処理する集中型アーキテクチャにより、関節ごとの遅延を排し、なめらかな動作を実現する。
また、独自開発した「デカップリングアルゴリズム」により各軸間の相互干渉を0.3%以下に抑え、サンプリング周波数1000Hzでの安定動作と最新ロボット通信プロトコルへの対応を実現した。
コスト面でも優位性がある。宋氏は「搭載するセンサーノードが一定数を超えると、光学ソリューションは電気式よりもコストを抑えられる」と説明する。ヒューマノイドのように全身に多数のセンサーを配置する用途では、配線の簡素化や電磁干渉への耐性といった面でも光学方式に軍配が上がるという。
医療・EV分野にも展開
設立から約1年で、同社はすでに中国トップクラスの複数のヒューマノイドメーカーと提携し、技術検証を進めてきた。ヒューマノイドのほかにも、医療機器、車載バッテリー衝撃検知システム、産業用ロボットアームなどへと用途が広がっている。
例えば、手術支援ロボットの分野で、同社のセンサーは電磁干渉に強く、小型かつ無電源で動作するといった特長を生かして、低侵襲手術に求められる厳しい要件を満たすことができる。また、電気自動車(EV)分野では、バッテリー衝撃検知システムに導入され、外力と温度をモニタリングしながら衝撃や熱暴走の状況をリアルタイムにフィードバックする。
ロボット業界で同社のように光学技術をベースにしたセンサーを手がける企業は多くない。宋氏は「市場がヒューマノイドをロボットの究極の形だと考えるなら、光センサーはこれから長期間にわたって採用されるソリューションになる」との見方を示した。
(翻訳・大谷晶洋)