【閉じる米国、開く中国】アンソロピックAIの利用停止、中国オープンモデルの追い風に
更新
米政府の措置により、アンソロピックの最先端AIモデル「Fable 5(フェイブル5)」「(Mythos 5(ミュトス5)」が世界的に利用停止となったことで、中国のオープンソースAI企業が素早く動き始めた。
「最先端モデルが突然使えなくなる」という事態は、多くの企業にとってリスクとして映る一方、中国勢にとっては存在感を高める好機にもなっている。
先陣を切ったのは香港上場の大規模言語モデル(LLM)開発企業、智譜AI(Zhipu AI)だ。同社は6月13日、最新のオープンモデル「GLM-5.2」の全面公開を発表した。市場の反応は大きく、株価は15日に一時47.6%上昇し、終値でも32.8%高を記録。時価総額は6496億香港ドル(約13兆円)に達した。
こうした動きはZhipu AIだけにとどまらない。中国メディア「第一財経」によると、AIモデルの利用基盤である「OpenRouter」では、中国製モデルの利用回数が直近3週間にわたり米国製モデルを上回った。利用数上位9モデルのうち5モデルを、Xiaomi(シャオミ)、MiniMax、DeepSeek、Zhipu AIなどの中国勢が占めているという。海外でも、評価額300億ドル(約4兆8000億円)規模のAIコーディングツール「Cursor」が、新モデルの開発に中国Moonshot AIの「Kimi K2.5」を活用していたことが明らかになった。
米国勢が最先端モデルをクローズド化する流れを強める一方、中国はモデルの重みを公開するオープンソース戦略を推進してきた。今回のようにサービス継続性やアクセスの安定性が問われる局面では、その戦略が改めて注目を集めている。
熱狂が先行するリスクも
もっとも、中国勢が直ちに米国勢を置き換えると考えるのは早計だ。
今回利用停止となったのはアンソロピックの一部最新モデルに限られ、「Opus 4.8」など他の主要モデルは引き続き利用可能である。実際、多くの開発現場では業務への大きな影響は出ていない。
また、ZhipuAI株の急騰についても、市場の期待が先行している側面がある。株価は5月末の高値から6月中旬までに約45%下落しており、今回の上昇はその反動との見方もある。7月には大口株主のロックアップ解除も控えている。
一部の試算では、Zhipu AIのPSR(株価売上高倍率)はOpenAIやアンソロピックを大きく上回る水準に達しているとされるが、収益モデルや競争優位性が十分に確立されたとは言い難い。
中国AI企業にとって本当の勝負は、今回の追い風を一時的な市場評価に終わらせず、継続的な利用拡大と収益成長につなげられるかどうかにある。
*1香港ドル=約20円、1ドル=約160円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)