部屋を15分でスキャン、ロボットの学習空間に 中国LiDAR大手「Hesai」、3Dデータ事業へ

中国のLiDAR大手「禾賽科技(Hesai Technology)」が2026年10月14日、人工知能(AI)搭載3Dカメラ「Kosmo One」とクラウドAIプラットフォーム「Kosmo World」で構成される3D空間データエンジン「Kosmo」をリリースした。「Kosmo One」は実空間のデータを収集し、「Kosmo World」はそれをもとにAIの学習などに利用可能な3Dモデルを再構築する。同社は、自動車・ロボット向けセンサーのサプライヤーにとどまらず、フィジカルAIのデータ・学習インフラ分野へと事業拡大を図っている。

ロボットが移動や把持などのタスクを学習するには、実環境を反映したデータが大量に必要となる。しかし、実機でのデータ収集にはコストがかかり、シミュレーションだけで実空間を完全に再現するのも難しい。同社はここに目をつけ、実空間を繰り返し使える3Dモデルに変換すれば、ロボットの学習や検証のハードルを下げられると考えた。

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「Kosmo One」は、LiDARや8Kカメラ、1インチCMOSセンサー、慣性計測ユニットを組み合わせ、空間の形状から色、テクスチャ、デバイスの位置までをデータとして収集する。同社によると、一般的な室内環境の空間100平方メートルをスキャンする場合、手作業による従来の手法では約300時間かかるが、「Kosmo One」を使えば15分ほどで終わるという。もちろん、実際の所要時間は、空間の構造や求められるデータの種類によって異なる。

「Kosmo World」は収集されたデータをもとに、3Dガウシアンスプラッティング(3DGS)によるリアルな3Dモデルや、メッシュモデル、対象物までの距離が分かる深度マップを生成する。さらに、AIがスキャンされていない領域の補完や空間内の物体認識を行うほか、NVIDIA(エヌビディア)のIsaac Simといったロボット開発シミュレーターとの連携も可能だ。単に見て楽しむための3Dモデルを生成するのではなく、ロボットの学習に適したシミュレーション環境の提供を目指している。

共同創業者の李一帆CEOは、すべてAIで仮想の学習データを生成しても、新しい情報はそれほど得られないと考えた。まず実空間のデータを収集し、それをAIが補完・再構築することで、仮想と現実のギャップを解消することに加え、実データ収集にかかるコスト問題の解決を図っている。

「Kosmo」は2026年4月に同社のイベント(技術オープンデー)で初公開、7月にプロトタイプを納入し、銀河通用(Galbot)などのヒューマノイド(人型ロボット)メーカーから受注を獲得した。10月の製品発表会では、銀河通用や、ロボットメーカー・原力霊機(Dexmal)と戦略的提携を結んだほか、アニメーションのPixar(ピクサー)や地図情報の高徳地図(Amap)との提携事例も紹介された。

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なかでも高徳地図とは、ショッピングモールや飲食店、ホテルなどの3Dモデル再構築を進めている。Hesaiの顧客は、ロボットメーカーとAI開発企業にとどまらず、映画・テレビや観光、地図など実空間のデジタル化を必要とする分野にも広がる可能性が示された。

李CEOは、ビジネスモデルを3段階で発展させる方針を示した。まずは3Dカメラの販売、次に企業向けデータ収集・再構築サービスを通じて顧客がそのまま使える3Dモデルの提供を目指す。そして、最終的には再利用可能な3Dアセットを蓄積し、顧客のニーズに合ったデータの即時供給を可能にする計画で、これには少なくとも3~5年かかると見込んでいる。現在の顧客は企業が中心で、将来的には消費者向け製品の販売も検討している。

「Kosmo」を開発した背景には、主力事業であるLiDARの価格が下落していることがある。2026年4~6月に、同社のLiDAR平均販売価格は前年同期比35%減の1297元(約3万円)まで下がった。そこで収益源となる新規事業の開拓を進め、3Dモデルのほかにロボット用動力モジュールも手がけている。動力モジュールの納入台数は26年6月末時点で累計1万台を超え、用途もロボットハンドからヒューマノイド関節へと広がっており、27年の出荷台数は10万台に達する見込みだ。

同社はこれらの新規事業について、2026年の売上高予測を2億~3億元(約50億~70億円)に上方修整したほか、27年の売上高を7億元(約160億円)ほどと見込み、黒字化を果たすと予測している。

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*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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