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コーヒー産業で長らく最下層に置かれてきたインスタントコーヒーが高級路線に転じることで、にわかに注目株として伸びてきている。
中国で例年開催されている最大級のネット通販イベント「双十一(ダブルイレブン)」では昨年、新興ローカルブランド「三頓半咖啡(Saturnbird Coffee)」が老舗ネスレを上回り、コーヒーカテゴリで首位に立った。三頓半咖啡はわずか2年で4回の資金調達に成功し、短期間で人気を獲得。インスタントコーヒーブームを巻き起こしている。
今年に入り、中国では「スペシャルティコーヒー」を謳った新興コーヒーブランドが続々と資金を集めている。2月以降に資金調達を行ったのは、発表されているだけで三頓半咖啡のほかに「沃欧咖啡(wow coffee)」「時翠咖啡(SECRE COFFEE)」「永璞咖啡(PU COFFEE)」の3社だ。インスタントコーヒーを手がけるようになったプレーヤーは他にも後を絶たない。先日、ほとんどの店舗を閉店した「連咖啡(Coffee Box)」もそのうちの1社だ。
激震の市場で新たな注目株は「インスタントコーヒー」、その人気の理由は?
コーヒー市場、次のステップは
インスタントコーヒーを手がけるブランドが次々と出資を得ているのに対し、実店舗を構えるコーヒーブランドには負のイメージが付きまとう。中国発の新興コーヒーチェーンを代表する瑞幸咖啡による粉飾決算が明らかとなり、連咖啡が一斉閉店に踏み切るなど、いわゆる「ニューリテール(新小売)」のビジネスモデルは実店舗運営にはそぐわないものと訝しがる向きも出てきた。
瑞幸咖啡はかつて、事業を短期間で数千店舗規模まで拡張できることを証明して見せ、飲食業界の常識を覆した。
しかし、割引サービスの乱発なしには維持できないそのビジネスモデルは、小売業界には依然として踏み越えてはならない最低限の規律があることを知らしめた。割引サービスの大盤振る舞いは確かに短期間での事業拡大を実現しはしたが、それは後々自身の身に跳ね返り、自社の利益を圧迫している。
商品の価格設定も一種の学問だ。
消費者は商品の価格を見て、その商品の価値を認識する。瑞幸咖啡や連咖啡のように、最初に破格の安値を設定してしまえば、後になってから値上げするというわけにはいかなくなる。スタート地点から充分な利益をとり、健全な店舗運営を形成しておかなければ、店舗数が多くなるほどに経営は苦しくなる。
「瑞幸咖啡は当初から苦しい立ち位置に自らを置いてきた。市場の中でも最も競争が厳しいファストフード系コーヒーやコンビニコーヒーと同列に自身を位置付けたのだ。無論、スタートアップがいきなり高級ブランドを打ち出すのは難しいが」と、天図投資の潘攀氏は述べている。
高級ブランドを育てるには長い時間とイノベーションの両方が必要だ。スタートアップにとっては簡単なことではない。瑞幸咖啡の不正会計が明るみに出ることで、コーヒー業界はようやく正常運転に戻ったといえる。地道に事業を続けてきたブランドにとってはこのスキャンダルは吉報だったともいえよう。
事件がもたらした最も直接的なメリットは、多くの空きポジションが生まれたことだ。魚眼咖啡の孫瑜氏は、瑞幸咖啡のスキャンダルと新型コロナ禍が重なったことで、市場には攻められる隙間が数多く出てきたと語る。
「人々のコーヒーに対する需要、クオリティに対する認知、そのいずれもが伸びた。コーヒーの世界は商品構造から店舗構造まで刷新の道を歩むことになる。現時点でいえば、フリーズドライ製品がインスタントコーヒーの品質では突出しており、風味も優れた形態だと考える」とも述べている。
コーヒー業界内の共通した見解としては、消費者自身が進化し、市場が啓発されていくことによって、一~二級都市のような大都市圏ではコーヒー需要が爆発的に伸びていくとされている。前出の潘氏は、コーヒーも消費財と同様、需要は代替も転換も増幅も可能で、強固な天井が存在するわけではなく、巨大な可能性が眠っているという。「中国のコーヒー市場は天井が高い。市場そのものが成長中であり、さらなる需要も生まれ続けていて、チャンスに溢れている」と述べている。
(翻訳・愛玉)
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