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中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)は6月2日の新製品発表会で独自OS「Harmony(鴻蒙)OS 2」と同OSを搭載した新製品を複数発表した。
IoT時代のOSであるHarmonyOSはスマホ、PC、タブレット、テレビ、自動車、スマートウェアなどの異なるデバイスをシームレスにつなぎ、AndroidアプリやWebアプリとの互換性を持つ。
同発表会ではタブレット「MatePad Pro」といった新製品と共に、タブレット上で動画編集ソフト「万興喵影(Filmora)」を使う様子も紹介された。
次世代タブレットに唯一プリインストールされている動画編集ソフトがFilmoraなのは興味深い。Filmoraがファーウェイに選ばれた理由は何なのだろうか。
「隠れたユニコーン」、成長の軌跡
Filmoraを開発した「万興科技(Wondershare)」は2018年1月に深圳の新興企業向け市場「創業板(ChiNext)」に上場し、消費者向けソフトメーカーとしては中国で最初の上場企業となった。同社の製品は世界中で販売され、中国製デジタルクリエイティブソフトの中では隠れたチャンピオンとなっている。
Filmoraは中国で数多くの動画クリエイターが使う標準ソフトとなり、全世界で1億人以上のユーザーを抱える「動画編集の神ツール」と呼ばれている。
万興科技は2003年に設立された。創業者の呉太平(Tobee Wu)氏は、プログラマーとして製作した「Photo to VCD」という製品が想定以上にヒットし、海外オンライン販売により手にした資金を元手に起業した。
当時の中国市場は海賊版が数多く出回っていたため、呉氏は海外進出を選択せざるを得なかった。同社は05年、ファイルフォーマットの互換性の問題を解決する「PDF Converter」や「PDF element」といったヒット製品を発売し、マイクロソフトへの売り込みにも成功して北米、欧州、日本へ進出。07年には、AppleとWindowsのシステムに互換性が無い点に目を付け、マルチオーディオ変換ソフト「UniConverter」をリリースし、オーディオ変換市場に参入した。製品ラインナップは09年に動画編集、データ管理、ファイル編集ソフトまで広がった。
10年にショート動画業界の飛躍的な発展で編集ソフトに対する需要が急増したため、同社は Filmoraをリリースし、クリエイターの間で世界的な人気を博した。
17年になると、中国で正規版に対する消費者の意識が高まり、政府も自国のソフト開発企業を重視するようになったため、同社は中国へ戻り海外で人気を博したソフトを素早くローカライズした。
19年には海外版Filmoraが「Videomaker.com」の2019年度最優秀ユーザー編集ソフト(Best enthusiast editing software)を受賞し、中国の動画編集ソフトとして唯一のランクインを果たした。また、同社製ソフトウェアの全世界でのタウンロード数は延べ約1億回、新規課金ユーザー数は500万人に接近した。
20年末時点で、同社のメインECサイトは世界ランキング600位、年間アクセス数は延べ6億4700万回、年間製品ダウンロード数は延べ1億3400万回に達している。
万興科技が目指す道
呉氏はかつて「企業は人と同じで、長く素晴らしい活動を行うにはまず存続させることを考えなければならない。特に企業の設立当初は長く事業を続けようとする初心が大切だ」と述べている。
デジタルクリエイティブ産業の急成長によって、ソフト開発大手Adobeは19年に時価総額が1000億ドル(約11兆円)を超え、売上高が前年比24%増の90億3000万ドル(約1兆円)、純利益が同52.9%増の25億9000万ドル(約2900億円)となった。
同社はAdobeのような企業を目指している。呉氏は、デジタルクリエイティブ市場で向こう3~10年の間に表現の動画化、制作者の大衆化、技能のAI化という3つのトレンドが到来するとみている。
5GやAIなど次世代ITの発展と中国製正規版ソフトの普及がさらに進み、デジタルクリエイティブ市場は新たなチャンスを迎えている。万興科技とファーウェイとの提携はその序章にすぎない。
(翻訳・神戸三四郎)
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