中国の家庭用蓄電池メーカー、儲ける時代は終わりか。需要冷え込み在庫増加、工場操業停止も

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中国の家庭用蓄電池メーカー、儲ける時代は終わりか。需要冷え込み在庫増加、工場操業停止も

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EV(電気自動車)産業が飛躍的に成長し、その競争力の中核をなすバッテリー技術が世界をリードする水準に達した中国では今、EVに続く重要な投資先として大型蓄電システムに注目が集まっている。その一方で、リチウムイオン電池の新たな成長の極として家庭用蓄電池分野に多くの企業が次々に参入している。

小型の非常用電源として使用される家庭用蓄電池の容量は通常5kWhから20kWhだ。家庭用太陽光発電と組み合わせれば、発電ユニット、蓄電池、インバーターを含む家庭用発電・蓄電システムとなり、電気代を抑えることができるだけでなく、非常用電源としても使用できる。

家庭用蓄電システムは2022年、欧州を中心に爆発的に拡大した。ロシアのウクライナ侵攻の影響でエネルギー価格が急騰、家庭用電気料金が急上昇したことが需要増加の引き金となった。これにより中国の家庭用蓄電メーカーは大きな利益を上げた。システムメーカーはもちろん、パワーコンディショナーやバッテリーシステム、電池セルのメーカーまでが利益を求めて市場に殺到し、昨年は確かに多くの企業がかなりの儲けを手にした。

しかし今年に入ってから市場は縮小に転じる。欧州でエネルギー価格が大幅に下落したため、多くの地域で電気料金は2021年の水準にまで戻り、政府の補助金政策も引き締めが始まった。

海外の家庭用蓄電市場の冷え込みに加え、もうひとつ大きな要因となったのは在庫量の多さだ。中国の蓄電業界団体である儲能領跑者連盟(EESA)のデータによると、2022年の世界の家庭用蓄電システム(バッテリー)の出荷量は容量ベースで約24.4GWh、欧州向け出荷量は約9.8GWhだった。しかし出荷量と実際の設置容量とは異なる。22年の欧州の家庭用蓄電の設置容量は4.6GWh、つまり22年末時点で約5.2GWhの在庫を抱えているということだ。今年上半期に欧州全体で蓄電市場は約5.1GWhの増加となり、これでようやく22年末の在庫をほぼ解消できたことになる。

ただ、在庫解消ペースはメーカーの出荷ペースに比べてはるかに遅い。世界の家庭用蓄電システム(バッテリー)の今年上半期の欧州向け出荷量は約6.3GWhだった。格付け会社の米S&P Globalによると、23年4-6月期の世界家庭用蓄電システム出荷量は記録を取り始めてから初めて減少し、前年同期比で2%のマイナスとなった。

画像:S&P Globalより

中国のトップメーカーも影響を受け、業績が明らかに下向き始めた。市場シェアで常に上位3位に入っている「派能科技(PYLONTECH)」は、今年10月末に発表した2023年7-9月期決算で、売上高が前年同期比71.29%減の4億9200万元(約98億円)、親会社に帰属する当期純損失が3831万300元(約8億円)と、同110.05%の減少となった。

こうした状況は派能科技だけにとどまらない。23年4-6月期以降「徳業科技(Deye)」や「固徳威技術(GoodWe)」「科士達科技(Kstar)」などの業績は瞬く間に前年同期比マイナスとなった。

また昨年はバッテリー価格が高止まりしていたが、今年はバッテリーセルの価格が下がってきている。中国の主要家庭用蓄電向けバッテリーセルメーカーの稼働率は、今年10月に20%以下にまで落ち込んだという。太陽光発電ポータルサイト・上海有色網のシニアアナリストによると、各バッテリーセルメーカーの生産量と生産能力から計算すれば現時点で生産ラインの8割程度が稼働を停止している状況で、在庫の解消が急務になっている。在庫を持たないメーカーはより低コストで新製品を生産できるので、古い製品の在庫を解消することはますます難しくなる。こうしたなか家庭用蓄電市場の参入企業は次々と産業用の蓄電ソリューションを打ち出し、欧州以外の市場に目を向けるメーカーもいる。

もちろん、今後市場が活気を取り戻す可能性もある。市場調査会社InfoLink Consultingによると、今年上半期に在庫を解消した後、下半期には蓄電市場の出荷量は着実に増加し、世界の家庭用蓄電池出荷量は今年35GWhに達する見込みだという。ただ、蓄電市場では確かに需給バランスが崩れており、状況が好転する前に業界再編があることは間違いないだろう。

*2023年12月8日のレート(1元=約20円)で計算しています

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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