テスラ上陸前に香港IPOを急ぐ——中国自動運転企業が「AI企業」を名乗る理由

中国の自動運転分野で、企業の上場に向けた動きが相次いでいる。

自動運転技術の有力企業「軽舟智航(Qcraft)」と「元戎啓行(DeepRoute.ai)」が、2026年内の上場に向けて非公開で香港証券取引所に申請書類を提出したという。ユニコーン企業の「Momenta(モメンタ)」も、既に申請手続きを完了している。香港証券取引所でのIPOは申請から上場まで通常6~9カ月かかるため、今年の下半期に3社がそろって上場する可能性が極めて高い。

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なぜ今上場なのか?

このタイミングを選んだ背景には、いくつもの圧力が複雑に絡みあっている。

ある業界関係者は、「米電気自動車(EV)大手テスラの高度運転支援機能『フルセルフドライビング(FSD)』が中国市場に入ってくる前に上場しなければ、市場から適正な評価を受ける機会すら失いかねないと考えている」と企業の焦りを代弁する。

消費者にとって自動運転機能は、もはやオプションではなく標準装備になりつつある。2026年に入り、都市型NOA(Navigation on Autopilot)は10万~15万元(約230万~350万円)クラスのモデルにも搭載されるようになった。自動運転開発企業は、すでに技術提供から量産車搭載までのビジネスサイクルが出来上がっている。

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前述の3社は、いずれも複数の自動車メーカーから量産受注を獲得している。Momentaは上海汽車集団(SAIC)、ドイツのメルセデス・ベンツやBMWなど、DeepRouteは長城汽車(GWM)や零跑汽車(Leap Motor)、Qcraftは理想汽車(Li Auto)や奇瑞汽車(Chery Automobile)などの顧客を抱えている。業績が好調な今のタイミングで上場するのは、非常に合理的な判断といえる。

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一方で、資金繰りの厳しさも増している。規模拡大を競うこれからの局面では、データ基盤の構築や大規模言語モデル(LLM)への投資が際限なく膨らみ、キャッシュフローを大きく圧迫する。しかしプライマリーマーケットでは、自動運転技術への投資熱が数年前に比べ明らかに冷え込んでいる。手元資金が1~2年分しかもたない中堅企業も多く、セカンダリーマーケットでの資金調達ルートを開拓することが切実な課題になっている。

また、投資家の評価軸も変わりつつある。フィジカルAIや人型ロボット(ヒューマノイド)の人気が高まり続けるなか、セカンダリーマーケットにおける自動運転企業の評価基準は一段と厳しくなっている。

自動車メーカーから「AI企業」へ

上場へのプレッシャーに加え、より本質的な問題にも直面している。それは、自社の価値をどのように再定義するかだ。

エンド・ツー・エンド技術の普及に伴い、各社のアルゴリズムの技術差が小さくなりつつある。資本市場では自動運転を、確実ではあるが伸びしろは限られる分野と捉えるようになり、企業の時価総額は「MiniMax(稀宇科技)」などのAIモデル開発企業に比べ大きく見劣りする状況だ。

自動運転開発企業は、より高い評価を得ようと戦略の転換を急ぐ。Momentaはチップ開発に乗り出し、ソフト・ハードを一体で手がける垂直統合モデルへの転換を図り、自動運転向けAIチップ大手「地平線機器人(Horizon Robotics)」と似た路線を歩み始めた。DeepRouteとQcraftはフィジカルAI分野にも事業を拡張して、自動運転企業というイメージを薄めようとしている。

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DeepRouteの周光CEOは、米半導体メーカーNVIDIA主催のAI技術カンファレンス・GTC 2025で、自動運転を汎用人工知能(AGI)へのステップにする「Road AGI」という概念を提唱した。Qcraftの于騫CEOも、「自動運転はフィジカルAIへの最適な入り口だ」と述べ、応用シーンの拡大に取り組み始めている。

これら3社は、本質的には同じことをしている。既に確立された自動車関連市場を、十分に拡張が可能な未来のAI市場として再定義しようとしているのだ。

結局のところ、自動車サプライヤーなのか、それともAI企業なのか。その答えは上場後の株価で示すことになる。

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*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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