地下8000メートルから宇宙まで 中国新興、特殊用途のパワー半導体で数十億円調達
特殊用途向けパワー半導体を開発する中国企業「譜析光晶(Spectrum Semiconductor)」はこのほど、シリーズCで数億元(数十億円)を調達した。出資には、浙江嘉合長越や成都科創投、上海半導体装備材料産業投資基金など10社が参加した。
資金は、第4世代半導体となる酸化ガリウムパワー半導体の改良、耐熱温度230度級の半導体モジュールの生産拡大、ロボット関節向け製品の開発、宇宙コンピューティング・核融合発電といった最先端分野向け製品の研究に充てられる。
譜析光晶は2020年に設立され、25年の売上高が2億3000万元(約50億円)に上り、すでに黒字を達成したという。
パワー半導体は2020年頃から需要が増え始め、電気自動車(EV)や太陽光発電、蓄電などの分野に多くのメーカーが参入した。一方、同社は汎用製品をめぐる価格競争を避け、特殊な環境で使われるパワー半導体とそのシステムを開発することにした。
演算を担う中央演算処理装置(CPU)や画像処理装置(GPU)とは異なり、パワー半導体は主に電力の変換と制御に使われる。高い電圧や大きな電流への対応が求められ、扱う電力が大きくなるほど、変換効率、放熱性能、信頼性が重要になる。創業者の許一力CEOは、同社製品の特長として、250度以上の高温に耐える性能や小型・軽量設計、発熱の少なさ、過酷な環境での信頼性を挙げる。
同社はまず、地下深部エネルギー探査分野向けに製品供給を始めた。例えば石油探査で地下8000メートルまで進むと、温度は200度を超えることもある。掘削装置の内部スペースは限られるため、パワー半導体システムには高い耐熱性に加え、小型化と発熱の抑制が求められる。
システムを200度以上の環境で安定的に稼働させるには、単に耐熱性の高い半導体を導入するだけでは不十分だ。抵抗器やコンデンサ、変圧器、基板、パッケージ材料のいずれか一つでも壊れれば、システム全体が停止しかねない。そこで同社は、パワー半導体や駆動・フィードバック回路などをまとめて封止するパッケージング技術を開発した。
2023年以降は、地下深部エネルギー探査に加え、宇宙コンピューティングやロボット関節などの分野にも目を向け始めた。
ロボットがより速く走り、高く跳躍するには、関節を小型・軽量化しながら、瞬間的に大きな出力を得る必要がある。同時に、出力の増大に伴う発熱への対策も欠かせない。同社によると、石油精製、鉄鋼、アルミニウム製錬などの現場では周囲の温度が60~70度に達することがあり、関節内部の発熱が加わると100度を超え、一般的な電子システムの長期的な信頼性が低下するという。
同社は、高温下での動作や発熱抑制、小型化に関する技術の蓄積を生かし、こうした環境で使用する産業用ロボットの関節向けパワー半導体を開発した。
今後は、人工知能(AI)データセンターの電力変換システム、高出力ドローン、宇宙コンピューティング、核融合発電などに向けた製品展開を計画する。また、酸化ガリウムパワー半導体の開発や、炭化ケイ素(SiC)と酸化ガリウムを組み合わせたハイブリッドパワー半導体の量産化を目指すほか、AIデータセンター向けの環境負荷の低い電力供給システムや、宇宙コンピューティング向けの電源システムなどの開発も進める方針だ。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)