Temu、SHEINも…中国越境ECが韓国市場に大攻勢。「米国より低リスクで戦いやすい」

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業特集注目記事

Temu、SHEINも…中国越境ECが韓国市場に大攻勢。「米国より低リスクで戦いやすい」

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

「韓国のコーヒー愛好家によると、中国系のECサイトで売られるコーヒーメーカーの値段は韓国のサイトよりゼロがひとつ少ない。また、韓国のサイクリストが自転車部品を購入しようとしても、メーカー純正の部品は輸入量が少なくて手に入らなかったり、価格が高すぎたりするが、中国のネット販売アプリを利用すれば、直接メーカーから購入するより2桁も安くなる」。北京対外経済貿易大学朝鮮半島問題研究センターの権小星氏は、中国の越境ECが韓国の消費者に与えている影響についてこのように語った。

今や、アリババグループの越境EC「AliExpress(アリエクスプレス)」やPDDホールディングス傘下の「Temu(ティームー)」に代表される中国の越境EC軍団が、世界第5のEC市場である韓国でその勢力図を塗り替えようとしている。

中国発格安EC、日本での利用者数急増。Temuは1年未満で1500万人超え

韓国の調査会社Wiseapp Retail Goodsによると、アリエクスプレスの今年3月のMAU(月間アクティブユーザー)は前年同期比114%増の887万人、地元韓国の大手EC「Gmarket」や「11番街(11st)」を抜いて韓国第2位となり、海外のECプラットフォームとしては初めて韓国でTOP3に食い込んだ。一方、Temuの今年3月のMAUは829万人に急増、韓国市場に参入した昨年8月から1508%増加した。

中国系ECが韓国を席巻

韓国のEC市場は中国、米国、英国、日本に次ぐ規模を持つ。韓国統計庁が今年2月に発表したデータによると、2023年のEC取引額は前年比8.3%増の227兆3470億ウォン(約27兆円)で、2001年の統計開始以降で過去最高を記録、越境ECも6兆7567億ウォン(約7900億円)で過去最高となった。このうち、中国の越境ECは121.2%増の3兆2873億ウォン(約3900億円)に急拡大し、初めて米国を抜いた。

アリエクスプレスは2018年に韓国市場に参入し、22年11月にはカスタマーセンターを開設して韓国市場への取り組みを強化してきた。23年3月からは、一部の商品について配送3日~5日以内、送料込み、返品無料などを売りにした「Choice」システムを導入、併せて1000億ウォン(約120億円)の資金投入も明らかにした。こうした継続的な働きかけによって急激に勢力を拡大し、同年に韓国市場でユーザー増加数が最も多いスマホアプリとなった。

アリエクスプレスの急拡大で、提携先の韓国物流大手「CJ大韓通運」の株価は昨年12月の約9万ウォン(約1万円)から、今年2月には14万ウォン(約1万7000円)に高騰した。韓国での注文増加に合わせて地元の物流企業との協力を拡大し、今年、CJ大韓通運のほか韓進、ロッテグローバルロジスティクス、韓国郵便など大手4社と提携契約を締結した。

Temuも同様に、デジタルマーケティングと大幅割引クーポンを駆使して韓国市場を攻略していった。インスタグラムやYouTube、Googleなど、SNSや検索エンジンを利用するだけでなく、テレビのバラエティ番組でプロダクトプレイスメント(PPL)の広告手法を使い、じわじわとユーザーをとりこにしていった。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は5月13日、Temuがリスクを回避し、他の成長ポイントを探すため、事業の中心を米国から欧州やその他の国に移し、ユーザーの獲得に注力する方針だと報じた。業界関係者によると、Temuの米国での売上高は昨年、全体の60%を占めたが、今年は3分の1に届かないと予想しており、Temuにとって日本や韓国が重要な成長市場になると見ている。

中国の四大越境ECサイトのひとつである「TikTok Shop」も韓国でEC事業を開拓しようとする動きを見せている。TikTokの韓国子会社は昨年12月、韓国でTikTok Shopの商標登録を申請した。また、韓国での販売や業務開発、広告、EC業務を担当するスタッフを40人以上雇用する計画を発表している。

中国発のアパレルECサイト「SHEIN(シーイン)」も6月20日、韓国市場に本格進出すると発表した。SHEIN の韓国サイトは4月末に開設されており、5月には傘下のストリートファッションブランド「DAZY」のグローバルアンバサダーに韓国の人気女優キム・ユジョンを起用し、コラボアイテムの販売を開始していた。

中国の越境ECプラットフォームは強力なサプライチェーンを持ち、コストパフォーマンスに優れているという点で韓国のECよりも有利だ。これについて権氏は、「韓国のECプラットフォームが扱う商品の大部分は中国のECプラットフォームで仕入れたものだ。例えば、韓国EC最大手のCoupang(クーパン)の商品の多くはアリババ傘下のBtoBサイト『1688』で仕入れている。韓国まで運んで販売すれば、間に入る中間業者の手数料が上乗せされる。消費者向け電子製品についても、韓国にはサムスン電子と米アップルのものしかなく、いずれも大変高価なので、アリエクスプレスの参入で韓国の消費者の選択肢が増えることになる。アリエクスプレスとTemuは、これから韓国消費者の消費行動を左右するだろう」と語った。

作者:霞光社(WeChat公式ID:Globalinsights)、李小天

※1ウォン=約0.12円で計算しています。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録