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3月2~5日にスペイン・バルセロナで開かれた「MWC2026」で、韓国サムスン電子は、中国スマートフォンメーカーの猛追に対抗する独自の戦略を示した。
カメラのスペックを追う中国勢に対し、ディスプレイ技術を持つ強みを生かし、スマートフォン業界初の「のぞき見防止」機能をアプリごとに操作できる「プライバシー・ディスプレイ」を搭載するとともに、AIによるエコシステム統合を武器に選んだ。グローバル市場でのハイエンドスマホの競争は熾烈さを増しており、サムスン電子にとっても正念場を迎えている。
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スマホ初のプライバシー・ディスプレイ

サムスン電子のブースで最も来場者の足を止めたのが、「プライバシー・ディスプレイ(Privacy Display)」を搭載した新型フラッグシップ「Galaxy S26 Ultra」「の体験ゾーンだった。画面を斜め方向から見た際に表示内容が判別できなくなるこの機能は、スマートフォンとして業界初の搭載となる。
電車内での銀行操作や機密メッセージの確認など、日常の「のぞき見リスク」をハードウエアレベルで防ぐ発想だ。これまでユーザーは、プライバシー保護フィルムを別途購入する必要があったが、今回の機能は端末そのものに統合した設定の柔軟性も高く、アプリごとにオン・オフを切り替えられるため、銀行アプリやプライバシーを含む内容のみを保護対象に指定することも可能だ。中国勢がカメラスペックを磨き続けるなか、サムスン電子が「セキュリティ」という軸で差別化を図った狙いは明確だ。カメラのスペックでは比較できない、サムスン独自のユーザー体験の領域に勝負を持ち込む。

提携先は「レンズ」ではなく「AI」
中国メーカーはカメラで、ライカやツァイス、ハッセルブラッドといった欧州の老舗カメラブランドと組むのに対し、サムスンが組んだのは米Googleの「Gemini」と「Perplexity AI」だ。
サムスンが今回中核に据えたのは、自律性の高い「エージェンティックAI(Agentic AI)」によるエコシステムの導入だ。ユーザーの意図を汲み取り、自ら計画を立てて実行する能力を持つ。スマートフォンだけでなく、タブレット、スマートウォッチ、イヤーバッズ、ノートPC、ヘルスケアアプリまで横断的に接続される。このマルチデバイスの連携は、中国勢が簡単には模倣できないサムスンの牙城といえる。
ブランド信頼と「メモリ不足」の影
機能面以外でのサムスンの優位性は、長年培ってきた「ブランドの信頼性」にある。欧米・日本市場において、中国製スマートフォンはデータ安全性への根強い懸念に直面している。サムスンが長年積み上げてきたポジションは、スペックには現れない競争上の優位として機能し続けている。
一方で、世界的にメモリ不足が深刻化しており、スマートフォン業界への価格上昇圧力も強まっていることはサムスンにとって懸念材料だ。サムスン、韓国SKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーのメモリ大手3社は世界市場を寡占しているが、各社ともAIデータセンター向けの高帯域幅メモリ(HBM)増産に経営資源を集中させており、スマートフォン向け汎用メモリの供給が慢性的に逼迫している。OpenAIの「Stargate」プロジェクト単体が世界のDRAM生産量の最大40%を消費する可能性があるとの試算も報じられており、残りを全世界のスマホ・PCメーカーが奪い合う構図となっている。自社にメモリ事業を持つとはいえ、価格競争力の面で優位性を持つ中国メーカーとの競争が激化するのは間違いない。

サムスン電子の盧泰文社長は「すべての革新の中心にユーザー体験を置き、モバイル技術の可能性を継続的に拡張していく」と強調した。カメラスペックの数値競争から一歩引き、「プライバシー」「AIエコシステム」「信頼性」という、中国勢が短期間では追いつきにくい軸に勝負を絞る戦略だ。
(36Kr Japan編集部)
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