中国のAI溶接ロボ「3Srobotics」、韓現代ロボティクスが出資 造船需要で29年まで受注満杯
溶接ロボットを開発する中国スタートアップ「昇視唯盛(3Srobotics)」がこのほど、シリーズAの追加ラウンドで数千万元(数億円)を調達した。韓国HD現代ロボティクスと中国の微光創投(Welight Capital)が共同出資した。資金は、ロボットの「頭脳」にあたるAIシステムの開発、ソフト・ハードウエアの改良およびマーケティングに充てられる。
3Sroboticsは2020年に設立され、「AIアルゴリズム+溶接技術+ロボット本体」を一体開発できる技術力を強みとしている。22年には産業用ロボットを手がける哈工現代(HGXD)を買収。浙江省海寧市にあるスマート工場の年産能力は数千台、これまでに1万台近くを出荷した。
アルゴリズムについては、「エンド・ツー・エンドのエンボディドAIモデル」というアプローチを採用。溶接作業に特化したマルチモーダルモデルを活用し、ロボットに溶接というタスクを理解させつつ、大量の工程データを用いてシミュレーション訓練を実施する。これにより、ロボットは非標準的で複雑な作業環境においても、溶融池のリアルタイムモニタリングや工程調整といった高度なスキルを発揮できるようになる。この一連の操作を一貫して実行できる能力が、コストコントロールや製品改良に大きく貢献している。
同社は3世代にわたる製品を展開。第1世代は汎用型の産業ロボット。第2世代のスマート溶接ロボットは、AI認識と3Dモデリング機能を備えているためティーチング不要で、すでに大規模出荷を実現している。第3世代は車輪式と脚式の自律移動型溶接ロボットだ。
創業者の王徳釗氏は、第3世代の製品は移動能力と複数ロボットの協調制御機能を備えているため、従来の生産工程の約30%を占めていた吊り上げ待機時間を実際の作業時間に変えることができ、全体の効率が約30%向上すると説明。車輪式はすでに実際の現場に投入されており、脚式も量産に向けた最終段階に入ったという。
現在の顧客には、中国中鉄(China Railway)、宝山鋼鉄(Baosteel)、国家電網(State Grid)、中国中車(CRRC)、上海汽車(SAIC)などの大手企業が名を連ねる。2025年には韓国造船最大手・HD現代重工業から数千万元の受注を獲得したほか、国内の造船企業との協業も開始した。造船は工程の70%以上を溶接が占めるため、同社のロボットに対する需要が高まっており、すでに29年まで受注が埋まっている。2025年の売上高は1億元近く、2026年は数億元を突破する見込みだという。
今後は、溶接作業向けAIの性能を強化し、汎化レベルと実行効率を引き上げていく。また、「共通の頭脳」で複数のロボットを制御し、溶接だけでなく研磨や塗装などの工程もカバーできるようにする方針だ。
海外展開も積極的に進めている。HD現代グループからの支援を活用して、すでにグローバル市場に参入しており、今後は東南アジア、中東および日本・韓国市場を重点的に開拓する計画だ。創業者の王氏によると、日本や韓国では溶接工の人件費が中国の3〜4倍にのぼるため、AI溶接ロボットの需要がとくに旺盛だという。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・田村広子)