BYD、日本で次に狙うのは小型PHEV 「ATTO 2」を横浜・大黒ふ頭で目撃
中国の電気自動車大手・比亜迪(BYD)が日本販売7車種目として投入予定のSUV「ATTO 2(アット2)」を、横浜・大黒ふ頭にて目撃した。
BYDは2015年、京都府のプリンセスラインに大型バス「K9」を5台納車し、日本市場でのEV販売を開始した。これまでに日本全国の事業者へ500台以上を納車。2023年1月にはSUV「ATTO 3(アット3、中国名:元PLUS)」の投入を皮切りに、国内の乗用車市場にも参入を果たした。

中国で販売されている「元UP」
「新型車種を毎年1車種以上、継続的に導入」すると発表しており、2025年には純電動SUV「シーライオン7(海獅07)」に加え、日本向けPHEVの第1弾「シーライオン6(宋PLUS)」も発売した。
特に最近世間を賑わせているのが軽EV「RACCO(ラッコ)」だ。BYD初の軽自動車というだけでなく、海外メーカー初の日本専用設計の軽自動車でもあり、開発が明らかになった段階から大きな注目を浴びていた。2026年7月28日の発売以降、受注は8月上旬現在で1000台を突破したとしている。
日本でBYDをけん引するPHEV、次の一手は小型SUV
そんなBYDの次の一手は、PHEVの小型SUVである。2026年1月の「東京オートサロン2026」ではラッコに加え、SUV「アット2(元UP)」とステーションワゴン「シール6(海獅06)」の2車種のPHEVを日本に投入すると発表した。
BYDの2026年上半期における国内登録台数は、前年同期比42.7%増の2334台を記録したが、その中でもトップは1254台の「シーライオン6」で、現在はPHEVが日本事業をけん引していると言える。
日本ではここ2〜3年ほどで充電インフラが充実してきた印象はあるが、一方でまだBEVに対する不安を抱く消費者は多い。特にアパートやマンションといった集合住宅では、一戸建てに比べて自宅充電設備の導入が難しいケースも多く、BEV普及のハードルの一つとなっている。。このような事情もあり、外部充電が可能で、エンジンも併用できるPHEVが売れているのも納得だ。
全幅1830mm、日本市場でも扱いやすい「ATTO 2」
日本向けPHEVの2モデル目となる「アット2」は、中国では小型SUV「元」シリーズの最小モデルとして展開されている。同国ではBEVのみである一方、欧州や中南米といった海外市場ではBEVとPHEVの両方を揃える。
あくまで海外仕様車の数値だが、サイズは全長4310 mm×全幅1830 mm×全高1675 mm(ホイールベース2620 mm)。全幅が日本で一般的な機械式駐車場の制限幅の目安となる1850mmを下回る。日本の都市部でも扱いやすいサイズと言えそうだ。サイズを鑑みると、ホンダ WR-Vやトヨタのヤリスクロス、日産のキックスといったコンパクトSUVが競合相手となるだろう。
海外で展開中のPHEVモデルは2グレードをラインナップし、下位グレードは容量7.8 kWh、上位グレードでは18 kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載する。システム総合出力も163 hpと209 hpと異なる一方、搭載エンジンはどちらもBYD製1.5ℓ直列4気筒エンジンで、モーターのトルクも300 Nmと共通だ。
なお、日本で販売されるアット2のパワートレインに関する詳細は未発表なので、海外同様に2グレードを展開するのか、上位グレードのみに絞るのかは現時点では不明だ。参考までに、2025年12月に発売された「シーライオン6」はFWD(前輪駆動)とAWD(四輪駆動)の2種類を用意し、エンジンも前者は自然吸気、後者はターボチャージャー付きとなる。
大黒ふ頭で実車を目撃、日本発売はいつ?

大黒ふ頭で他のBYD車種たちと保管されている「アット2」。ルーフが高いのが特徴
BYDの2026年上半期はラッコのプロモーションに専念していたこともあって、アット2やシール6といった車種の続報は2026年1月の投入発表以降、ほとんど無い状況が続いていた。そんな中、そんな中、日本の自動車輸出入の主要拠点の一つである横浜・大黒ふ頭で、陸揚げされたアット2の実車を確認した。
江蘇省常州市で生産される日本向けのBYD車は主に上海港を経由し、自動車運搬船で神奈川県の大黒ふ頭へと運ばれる。船から降ろされた後に保管する場所や、日本各地のディーラーへ配送するする前の「PDI(納車前点検・整備)」を実施する施設も大黒ふ頭に設けており、大黒ふ頭はBYDの日本展開における「入口」のような役割を果たしている。
今回目撃した4台のアット2は、シールやシーライオン6、ラッコといった他車種とともに、PDIの前段階にあたる保管場所にて待機していた状態だ。色は4台のうち2台がホワイトで、ほかの2台はそれぞれグレーやグリーンのボディカラーをまとっていた。これらは、日本での販売に必要な各種認証や試験に使用する車両とみられる。ここから型式の認定や補助金関連の審査、日本仕様車の航続距離の計測など、多くのプロセスを経て実際の発売へと繋がる形だ。
BYDはこれまでアット2の具体的な発売時期について明言していない。一方、発売したばかりのラッコにまずはリソースを割いたり、各種認証を通す必要があったりと考えると、発売は2026年11月ごろになるのではないかと言われている。また、「シール6」については、2027年上半期にずれ込む可能性も考えられる。

大黒ふ頭で保管されている「ラッコ」
アット2が属する全長4メートル前後のSUVは国産車・輸入車ともに選択肢は多い一方、PHEVは皆無だ。従来のハイブリッド車の利便性に、EV譲りの静かでパワフルな走りを組み合わせるPHEVは、充電環境に制約のあるユーザーにとっても現実的な選択肢となりそうだ。相応の注目が期待される一方、ラッコの宣伝や販売で各ディーラーが手一杯になっていないかという不安もある。ユーザーが購入時の相談から納車後のサポートまで安心して受けられるよう、ディーラー網とサービス体制のさらなる強化にも注目したい。
(文:中国車研究家・加藤ヒロト)