中国のパワー半導体新興、数億円調達 SST・AIデータセンター向けを強化
中国のパワー半導体企業「矽迪半導体(Hidi Semiconductor)」はこのほど、追加のエンジェルラウンドで蘇州創新投資集団(Suzhou Capital Group)と婧嘉投資から数千万元(数億円)を調達した。資金は半導体変圧器(SST)向けパワーモジュールの開発や製品の改良、サプライチェーンの構築に充てられる。
2023年設立のHidiは、複数のパワー半導体が組み合わさったパワーモジュールの開発に注力しており、主に太陽光発電、蓄電システム、データセンター用電源、SST向けに、SiC(炭化ケイ素)パワーモジュールやIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)・SiCハイブリッドパワーモジュール、および関連ソリューションを展開している。
これまでに60種類近くの製品を開発し、うち50種類以上は量産を実現した。なかでも主力製品の3レベル方式対応のSiCパワーモジュールは、次世代電力システムや再生可能エネルギー、スマート機器などの分野で、SSTや太陽光発電設備、蓄電システム、充電設備に採用されている。

画像は企業提供
同社によると、SST向けパワーモジュールの出荷量は中国首位だという。創業者の李発宝氏は、モジュール本体に加えて、駆動回路の設計やハードウエアの参考設計を提供し、顧客の製品開発期間を短縮できる点が強みだと説明する。
SSTは、従来型の変圧器にパワー半導体や制御技術を組み合わせ、電力変換の高度化を図る装置だ。次世代電力システムの中核技術の一つとされるが、高電圧・高周波環境で高い変換効率と信頼性が求められるため、技術的な参入障壁は高い。Hidiは、SST向けに高出力のSiCパワーモジュールを開発するとともに、独自のシミュレーション基盤を使い、システム全体での最適化を進めている。2メガワット(MW)級のSST向けパワーモジュールは、大手企業による検証を終え、最終顧客による試験段階に入ったという。
蓄電向け製品の開発も積極的に進めている。容量587アンペア時(Ah)や600Ah超の大型蓄電池の普及に伴い、電力変換装置(PCS)の高出力化が進んでいる。こうした需要に対応するため、出力430キロワット(kW)の3レベル方式対応SiCパワーモジュールを投入した。
ハードウエアに加え、パワーエレクトロニクス向けシミュレーション基盤「PLSIM」も自社開発した。半導体素子のモデル化や回路構成の最適化、熱解析、システム検証などに対応し、設計やシミュレーション、データ管理の機能を一体化している。PLSIMには複数の人工知能(AI)エージェントを搭載し、仕様書の確認や図面作成、設計検証などを支援する。開発担当者による検査結果をAIにフィードバックする仕組みも備え、人が適宜関与しながら、モデルの精度と信頼性を継続的に高めるという。
同社のパワーモジュールの年間生産能力はすでに100万個を超えている。売上高の約8割を蓄電や太陽光発電などの新エネルギー関連が占め、電力設備やデータセンター用電源向けにも製品を供給している。李氏は今後、SSTやAIデータセンター向け製品への研究開発投資を拡大し、出力密度の高いパワーモジュールやシステムソリューションの開発を進める方針を示した。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)