​​中国ミニバン戦国時代、制覇するのはトヨタか?BYDか?

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中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は、ハイエンドのサブブランド「デンツァ(騰勢、DENZA)」から、ミニバン「D9」のマイナーチェンジが発表された。次々とライバルが登場する中国ミニバン市場において、生き残りをかけたアップデートだ。

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BYDは2024年、全世界で425万370台の乗用車を販売した。前年比41%増という勢いで新エネルギー車(NEV)販売におけるトップメーカーの座を維持。425万370台のうち、BEV(純電気自動車)が176万4992台(41.5%)、PHEV(プラグインハイブリッド車)が248万5378台(58.5%)となり、前年に比べてPHEVの割合が増加した形だ。

日本では2023年より乗用車の販売を開始し、2024年の国内販売台数が2223台を記録した。2025年はBYD創業30周年及び日本上陸20周年の節目にあたり、日本向けにPHEVやEVトラックも投入するといった新たな挑戦を表明している。

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デンツァD9の進化

デンツァ D9は、2010年に登場した「M6」以来、12年ぶりのBYD製ミニバンとして2022年に初登場した。ボディサイズは全長5250mmx全幅1960mmx全高1920mm、ホイールベース3110mmと非常に大きく、大人7名が座れる余裕の大空間を特徴とするミニバンだ。

デンツァ D9の車内

2025年モデルでは、引き続きPHEVとBEVの2種類を用意するものの、PHEVでは2024年発表された最新PHEVシステム「DM-i 5.0」を採用する。容量40 kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池をそのままに、モーターや1.5ℓ直列4気筒ターボエンジンの改良により燃費を向上、40〜50 kmほど長い総合航続距離(NEDCモード)を実現した。また、モーター出力も前輪駆動モデルと四輪駆動モデルともに40 hpほどアップし、前者は268 hp、後者は328 hpを誇る。BEVではバッテリーとモーターともに大きな変更はなく、容量103 kWhのバッテリーによって一回の充電で620 km(四輪駆動モデルは600 km。どちらもCLTCモード計測値)走行できる形だ。

運転支援機能の刷新も今回のマイナーチェンジの目玉となる。ルーフ前端には「天神之眼」と呼ばれるLiDARユニットを1基搭載し、計算能力300 TOPSのNVIDIA製Orin-Xチップセットと組み合わせた運転支援システム「DiPilot 300」を採用することで、新たにレーンチェンジアシスト(LCA)や自動駐車、合流での自動流出入といった運転支援機能に対応した。また、ナビで目的地をセットすることで、発進・停車や右左折といった操作を自動で行なうレベル2+の「NOA(Navigation on Autopilot)」機能も特徴のひとつとなる。

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さらに、最上級グレード「旗艦版」では、助手席用10.25インチディスプレイや、3列目シートの電動調整やヒーター/ベンチレーション機能、フランスのオーディオ機器メーカー「DEVIALET」製18スピーカーシステムなどが標準装備となっている。

2販売価格は、PHEVの前輪駆動モデルが33.98万元(約730万円)、四輪駆動モデルが35.98~44.98万元(約780~970万円)。また、BEVは前輪駆動モデルが34.98万元(約752.9万円)、四輪駆動モデルが40.98~46.98万元(約890~1000万円)で、航続距離の違いはあるものの、PHEVモデルとそこまで大きな差はない。

中国ミニバン市場の激戦

デンツァ D9は2022年10月の発売以来、毎月1万台前後を販売しており、車名別販売台数ランキングの常連だ。しかし、2023年以降は広州汽車「トランプチ(傳祺)」ブランドの「E8/E9」、東風汽車「ヴォヤー(嵐図)」ブランドの「ドリーマー」、中国新興EV御三家「理想汽車」の「MEGA」、「小鵬汽車(シャオペン)」の「X9」といった新たなライバルが続々と登場しており、長らく刷新が滞っていたD9の競争力低下も見受けられた。

シャオペン X9

一方で、ガソリン車やハイブリッド車のミニバンも引き続き人気だ。2024年12月に中国で最も売れた大型ミニバンは一汽トヨタのハイブリッドミニバン「グランビア」で、1万513台を記録した。兄弟車である広汽トヨタの「シエナ」と合わせると1万7974台に達するので、トヨタは中国ミニバン市場においても堂々のトップとなる。グランビアとシエナは名前が異なる兄弟車であるために別々にランクインしているが、実質的には中身が同じトヨタのミニバンであるため、合算するとミニバンにおけるベストセラーはトヨタだともいえる。

一汽トヨタのハイブリッドミニバン「グランビア」

これに加え、トヨタの高級ミニバン「アルファード」や「ヴェルファイア」も高い人気を誇る。これらモデルは輸入車のため販売台数ランキングには名を連ねないが、それぞれ月間1500台前後を販売しているようだ。特に人気なのはアルファードで、中国でのメーカー希望小売価格が89.90万元(約2000万円)と大幅に高いが、実際の乗り出し価格はディーラー独自の上乗せ価格などを含んで日本円で約2500万円近くになることもある。

中古車市場でもその人気ぶりは健在で、中国の中古車掲載サイト「二手車之家」によると先代アルファードの3年後残価率は91.11%、ヴェルファイアでも79.60%と、トップのリセールバリューを誇るモデルとして紹介されている。実際に、走行4万キロメートルの先代モデルでも79.8万元(約1700万円)で販売されており、最新モデルと変わらない人気が見て取れる。

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ちなみに、米・ゼネラルモーターズ傘下の「ビュイック」が展開する「GL8」も中国では大人気だ。現在は通常のガソリンモデルに加え、ハイブリッドモデルやPHEVモデルも販売しており、GL8シリーズ全体で毎月1万台前後の販売台数を記録している。

ビュイックの「GL8」

日本以上にミニバンの選択肢が多い中国だが、中でもデンツァ D9は圧倒的なコストパフォーマンスで厚い支持を集めている。2025年モデルは価格据え置きで、快適装備や運転支援機能の充実を図ったことでさらなる「お得感」を演出する形だ。2024年8月に発表されたBYDの最新PHEVミニバン「夏」と共食いになりそうな予感もあり、今後の動向からは目が離せない。

文:中国車研究家 加藤ヒロト

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