動画生成AI時代、専用チップに商機。中国快手のAIチップ企業、「非GPU」で挑む

生成AIの用途がテキスト生成から動画生成へと広がるのに伴い、AIチップに求められる演算性能が高まっている。この流れを受け、中国でもAI専用チップを手がける企業が続々と誕生している。

そのうちの1社、ショート動画大手・快手(Kuaishou)からスピンオフしたAIチップ企業「凌川科技(Transtreams)」がこのほど、シリーズAの追加ラウンドで数億元(数十億円)を調達した。啓賦資本(QF Capital)が出資を主導し、新国都(XGD)や金浦投資(GP Capital)、朝暉資本(Aurora Capital)、百度風投(Baidu Venture)、亦荘科創二期基金などが参加した。資金は次世代チップの開発、主力のAIチップ「SL200」の生産拡大、海外市場の開拓に充てられる。

凌川科技は快手のチップ事業部を前身としており、快手が北京市人工知能産業投資基金と共同で設立した企業だ。創業者の劉凌志氏は快手の元副総裁で、ファーウェイや米インテルでコア技術分野の管理職を務めた経歴も持つ。2018年に快手のチップ事業部を立ち上げ、24年3月にスピンオフして独立運営を開始した。

ショート動画やライブ配信、AI生成動画が急速に普及したことで、データセンターでは動画のエンコード・デコードやAI推論などの演算需要が拡大している。テキスト生成に比べ、動画生成では処理すべき画像データが圧倒的に多く、帯域幅やストレージ、リアルタイム演算にも高いレベルが求められるため、データセンターの運用コストや消費電力の増大につながっている。

Soraが消えた動画生成AI市場で、PixVerseが日本に本気を出す理由【再掲】

こうしたなか、凌川科技はAI処理で広く使われる汎用GPUとは異なるアプローチを選択した。AIの動画処理に特化したSoC(システム・オン・チップ)を開発し、画像処理やAI推論の需要に高いエネルギー効率で応えることを目指す。

同社の主力製品であるAIチップ「SL200」はすでに大規模な商用化を実現している。同チップは中国でいち早く開発された動画向けSoCで、動画処理、AI推論、マルチコアCPUなどの機能が統合されている。米半導体大手NVIDIAのAV1対応エンコーダーに比べ、圧縮効率は30~35%高く、1万個規模のチップクラスターでも月間故障率は0.01%未満に抑えられている。

SL200は出荷数がすでに累計10万個近くに達している。快手のほかアリババクラウド(阿里雲)やバイドゥクラウド(百度雲)、ビリビリ(Bilibili)といったIT企業で導入されており、快手ではライブ配信向けトランスコーディング処理の99%以上を担っている。

凌川科技はSL200をベースに、アクセラレータカードやエッジコンピューティングデバイス、動画解析一体型システムなども展開している。製品の用途もデータセンターのほか、スマートシティー、スマート製造、軌道交通、ドローンなどへと広がっている。

加えて、次世代のAIチップアーキテクチャの開発にも取り組んでいる。オープンソースのアーキテクチャ「RISC-V」をベースに、推論に特化したアーキテクチャと対応するソフトウエアプラットフォームを開発し、高性能GPUを大量に必要としないAI動画処理基盤の構築を目指す。同社によると、国産の3D集積技術を採用した次世代チップは今年4月にテープアウト(設計完了)を終えており、動画生成などマルチモーダルAIアプリケーションへの活用を重点的に進めていくという。

海外事業については、すでに快手の海外事業を足がかりに東南アジアや南米へ進出しており、ファーウェイのほか、サーバー企業の超聚変(xFusion)や新華三(H3C)、浪潮(Inspur)などと共同でソリューションを展開している。

【AIがアニメを量産】中国発「AI漫劇」、爆速拡大と淘汰へ

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

日本企業のDXを促進するプラットフォーム「CONNECTO」
無料コンテンツ公開中

最新記事