AI活用の新薬開発を加速、中国「XtalPi」がソフトバンクなどから330億円超を調達

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AIを活用した新薬開発サービスを提供するバイオテック企業「晶泰科技(XtalPi)」がシリーズCで3億1880万ドル(約336億円)を調達した。ソフトバンク・ビジョン・ファンド、人保資本(PICC Capital Investment management)、晨興資本(Morningside Venture Capital)が共同でリード・インベスターを務め、「中金資本(CICC Capital)」「招銀国際(CMB International)」「未来アセット」など多数の投資機関がコ・インベスターとなったほか、テンセント、セコイア・キャピタル・チャイナ、「国寿股権投資(China Life Private Equity Investment)」「SIG Asia」など初期の出資者も追加投資を行った。「華興資本(China Renaissance)」が単独で財務顧問を務めた。

今回調達した資金はインテリジェント新薬開発システムのさらなる拡大に充てられるといい、演算能力、アルゴリズム、データの3つの角度からAIベース新薬開発インフラを構築し、全世界の製薬会社やバイオテック企業が新薬の開発効率を高められるようサービスを提供していくとのこと。

2015年に設立された晶泰科技はデジタル化とスマート化を特色とするAIベースの新薬開発サービス企業で、最先端の計算物理学、量子化学、AI、クラウドコンピューティングに基づいた新薬開発サービスを世界の企業に提供している。チームのコアメンバーはマサチューセッツ工科大学や北京大学、中国科学院などの出身者で、本社のある深圳のほか北京、上海、ボストンにも支社を置いている。

晶泰科技の共同創業者で董事長の温書豪氏は「過去数年にわたって、自社開発のID4新薬開発プラットフォームを構築しアップグレードすることに力を注いできた」と語る。このID4(Intelligent Digital Drug Discovery and Development)新薬開発プラットフォームは量子物理学やAIとクラウドコンピューティング技術を組み合わせ、分子薬物の重要な特性を正確に予測し、新薬の前臨床研究の効率や成功率の向上を目指すものだ。現在、世界の多くの製薬会社がこの技術を採用している。

同社のアルゴリズムは物理理論とAI理論をベースにしたもので、古典力学から量子力学までを幅広く網羅したアルゴリズムを100種類以上蓄積してきた。今後は最新の実験施設と新薬開発プラットフォームを緊密に結び合わせたデジタルツインの研究開発システムを作り上げ、実験施設における模索とシミュレーションアルゴリズムを連動させた効率の良い開発の実現を目指している。

データ保存にはデータレイク方式を採用して、ペタバイト規模にも迫るデータを蓄積している。またマルチクラウドアーキテクチャをベースに、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、テンセントクラウド、Googleクラウドなど複数のパブリッククラウド上に大量の計算リソースのスケジューリング可能な演算プラットフォームを構築、大規模な薬物分子発現・スクリーニングプロジェクトを同時に実施できるようにして、AIを活用した新薬開発技術を大規模に実用化している。

晶泰科技のXtalForceプラットフォーム

晶泰科技はこれまでに米国、欧州、中国、日本などの創薬分野のパイオニア企業70社余りに新薬開発サービスを提供してきた。同社のビジネスには固体医薬品開発サービス、医薬品設計サービス、AIサービスなどの技術サービスのほか、ビジュアル力場計算ソフト「XtalForce」、結晶構造解析ツール「XtalVision」、AIモデルによる最適化合物選択ツール「Renova」などのプラットフォーム提供が含まれる。

今回、共同でリード・インベスターを務めた晨興資本の創業パートナー劉芹氏は次のようにコメントしている。「AIの発展や演算資源の低コスト化、パブリック化に伴い、1兆ドル(約105兆円)規模の医薬品市場にもテクノロジーによる変化の波がついに訪れた。アルゴリズムによる計算結果と実験を結びつけ、迅速なフィードバックのサイクルを作り上げることで、新薬発見のスピードやクオリティーが飛躍的に向上するものと期待している」(翻訳・畠中裕子)

 

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