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中国各地でキャラクターのバッジやポスターなどの「谷子(グッズの音訳)」が売られるアニメ・ゲームのグッズショップが急激に増えている。これまでもひっそりとあったが2024年に急増した。グッズショップが中国全土で増えるトリガーとなったのが、23年初頭にオープンした上海の「百聯ZX創趣場」で「中国版秋葉原」と言われている。同年末時点で、百聯ZX創趣場の売上高は約3億元(約66億円)、顧客数は950万人、会員数は20万人を記録した。
他にも武漢の潮流盒子、鄭州の大上海城、南京の水遊城、成都の天府紅もファンの間で名が知られている。それだけ人気になると、中国各地のグッズショップを巡回したくなるファンもいるもので、週末になると南京、武漢、上海などの人気スポットにいっては掘り出し物グッズを買う人もいる。ただそんなファンでも今年はショップ数の新規オープンが多すぎて追いついてないという。
現在10を超えるグッズショップブランドがチェーン展開し、半年足らずで「潮玩星球」や「GOODSLOVE」というチェーンなどは20店舗以上を新規出店。「三月獣」は新サブブランド「三月獣ミニ」とともに店舗を増やし、2025年に100店、2026年に200店の新規オープンを計画しているという。
もともと中級層以上が通う学校の周辺には日本から輸入した文具やキャラクターグッズを販売する小さな店があった。商品は日本の売価の倍かそれ以上で売られ、学生を相手に多額の収益を上げていた。稼ぎ時の注目コンテンツの開始時や週末や休日などは、客単価が100元(約2200円)をゆうに超えることもあるという。中国は長期的には物価はあがっているがそれでも驚きの売上だ。日本のグッズを輸入販売するので、値段は中国で売られるアクリルや紙や金属の加工製品としてはかなり高くなるわけだが、この値段に合わせた中国IPのグッズ製品が続々と登場し、後に急増したグッズショップの店内を埋めるようになる。
グッズショップが急増したのには理由がある。それはアフターコロナに、モールに再び消費者を集めようと、モール側はトレンディな商品を集めた店舗を導入したり、「集市」と呼ばれる屋台を集めたマルシェを開催したりした。その中には若者に刺さるグッズショップがあり人を集め、グッズショップは人気で儲かるという認識が徐々に広がっていった。
調査会社のiResearchによれば、中国のアニメやゲームなどの一人当たりの消費額は年間1000元(約22000円)を超えると分析する。キャラグッズ購入がブームとなる中、起業家もグッズ市場に参入している。グッズビジネスのコミュニケーショングループでは、出店の指導を求める人が増えていて、その中にはアニメやゲームの文化を全く理解していない人や、科学的解説を求める人もいる。
金稼ぎのために流行に乗ろうとする業者が出ると、ファンは離れるということがこの数年だけでも何回も起きている。例えば漢服、ロリータ、JKの3つのファッションが中国で流行り盛り上がったことがある。漢服は最初マニアの間での本物志向も、やがてインフルエンサーを起用した「十三余」などのスタートアップが台頭し、さらには激安アパレルの曹県の業者が参入、海賊版なども登場し市場は崩壊。正調の漢服文化が消滅した。ドールにおいても、趣味サークルで自分だけのドールを見せあい盛り上がって関連商品の値段が高騰した後に、無関心の業者が投機目当てでドールに参入しファンは一気に冷めた。
グッズショップもまた、この1年で一見盛り上がるように見えたが、早くも閉店の動きがはじまった。グッズ店が増えるにつれ、ファングループの中でグッズ探しの熱気は徐々に冷めていき、参加者が続々とサークルから離れ始めた。
他にも理由はある。ターゲットは学生だ。経済的に自立した若年層や中年層とは異なり、この年齢層の消費者はお小遣いから捻出するので予算は限られ、時間も学校が忙しくて週末しかいけず平日は閑古鳥が鳴く。そのうえで行くたびに新しい製品があればファンは嬉しいが、グッズはアニメやゲームと連動するのでそうそう新しい商品の入れ替わりはない。グッズショップの商品は占有面積が小さく倉庫保管の要件が低いが、逆に言えば棚を埋めるだけでも大量の商品が必要になるのも新商品投入でネックとなる。そのうえで店が続々とオープンし、どのショップでも同じものが同じ値段で売られていて、そうした状況下で消費者は消費を抑えようとオンラインで最安値で買おうとするのだから、店舗当たりの売れ行きが悪くなるのも納得がいく。大都市が飽和したので、グッズチェーンは地方都市へ進出しフランチャイズで稼ぎつつ次の手を探るのが関の山だ。
商品にはどこでも販売されているグッズと中国では手に入りにくい日本から輸入されたグッズに分かれ、前者の商品で満足したファンは後者を求めていく。中国で市場規模が大きくなりショップが増えて買いやすくなったようにみえて、東京の中野ブロードウェイや秋葉原の中古グッズショップで中国の若者が目を輝かせているのもそうした背景がある。
(文:山谷剛史)
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