新材料開発、AIで数年から数カ月に 中国発シミュレーター、計算速度「数十倍」実現
新材料の開発にAIを活用する「AI for Materials」分野のスタートアップ「索格智算」がこのほど、シードラウンドで1000万元(約2億3000万円)超を調達した。啓高資本(Inspiration Capital)が出資を主導し、交通大学教育発展基金会傘下の菡源資産、紫竹小苗、紫竹科技産業投資が参加した。調達資金はAI計算エンジンの開発、チーム拡充、計算インフラの整備に充てられる。
索格智算は2025年9月、上海交通大学出身の創業チームによって設立された。数学、AI、高性能計算、材料科学にまたがる学際的な専門家が中核を担う。
計算シミュレーションの「三重苦」を突破
新材料開発における計算シミュレーションは従来、「高精度・高効率・低コスト」を同時に実現できないという構造的な課題を抱えてきた。特に、材料中の原子間に存在する複雑な「長距離相互作用」が計算精度向上の壁となっていた。索格智算はこの課題に対し、独自の物理モデル結合技術を組み込んだニューラルネットワークアルゴリズム「SOG-Net」を開発。原子間の複雑な相互作用を高精度に再現し、シミュレーション誤差を大幅に低減したという。
「SOG-Net」の原理(画像はすべて企業提供)
このアルゴリズムを基盤に、ランダム分割型の分子力学シミュレーションソフト「RBMD」と、ソフトウェアとハードウェアを一体化した専用シミュレーター「NanoTitan(納泰)」を開発した。NanoTitanはGPU(画像処理装置)1枚で原子1000万個のシミュレーションが可能で、処理速度は既存ソフトの数十倍に達する。新材料の開発期間を従来の数年から数カ月へと短縮できる見込みだ。
現在、RBMDのアルゴリズムは国家スーパーコンピューティングプラットフォームに接続されており、NanoTitanも多くの大学・研究機関への導入が進んでいる。
一体型シミュレーター「NanoTitan」
CATL・ファーウェイとも連携
ビジネスモデルは、研究用途と産業用途の同時展開だ。大学や研究機関など研究用途向けには一体型シミュレーター「NanoTitan」をメインに展開し、産業用途では新材料開発を進める大手企業のニーズにフォーカスする。
加えて、他社との協業を通じた事業拡大も積極的に進めている。レアアース磁石メーカーの天和磁材(Tianhe Magnetics)とはAIを活用した磁石の開発・応用システムを共同構築し、材料設計から実験検証、実用化までの開発サイクルの確立を目指す。
車載電池大手CATLの研究部門・未来能源研究院とはリチウムイオン電池材料の分野で提携し、電池の劣化・故障メカニズムを高精度で予測できるシミュレーションモデルを開発。次世代電池の安全性向上とエネルギー密度の改善に取り組む。ファーウェイとは高性能計算と作用素学習(Operator learning)の分野で共同開発を進め、国産チップエコシステムの強化にも貢献している。
索格智算の技術の活用例
今回の資金調達を機に、同社はコアアルゴリズムの応用領域をレアアースや半導体にも広げ、技術開発中心のフェーズから大規模な市場展開へと移行する方針だという。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)