中国新興、「ロボットがロボットを作る」 100台納入で量産段階へ

エンボディドAI(身体性AI)を開発する中国スタートアップ「至簡動力(Simplexity Robotics)」が2026年7月6日、汎用ロボットの初代モデル「i7 Pro」の100台目を業界最速で納品した。また、波動歯車減速機の中国トップメーカー緑的諧波(Leaderdrive)と共に開発した世界初のエンボディドAI搭載CNC(コンピューター数値制御)スマート生産ラインも公開され、ロボットがワークの搬入・搬出、運搬を担うだけでなく、ロボット関節用中核部品の加工にも関わる「ロボットによるロボット製造」を実現した。

至簡動力は2025年7月設立、同社の王凱会長、賈鵬CEO、王佳佳COOはいずれも理想汽車(Li Auto)で自動運転技術の開発に携わっていた。自動運転の分野でデータ収集やAIのトレーニング、量産化などを経験したメンバーを擁する同社は当初から注目されており、設立から半年足らずで5度にわたり総額20億元(約500億円)を調達。IT大手の騰訊控股(テンセント)やアリババグループ、紅杉中国(HongShan)なども出資し、この分野でも屈指のスピードでユニコーン企業となった。

現在は、従業員150人ほどのうち半数以上がAIとアルゴリズムの開発に従事している。データ収集から自動アノテーション、トレーニング、展開、検証までを繰り返す閉ループを構築し、そのトレーニングプラットフォームを通じて、VLA(言語・視覚・行動)モデルや空間知能、モニタリングなどの機能が統合された潜在推論モデル「LaST₀」を開発した。

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同社は、AIの性能よりも実環境での検証に力を入れており、製品の用途として、CNC工作機械のワークを搬入・搬出するという極めて難易度の高い工程を選んだ。

工作機械の周りは油汚れがひどいため、初期のテストではロボットが滑りやすい床をスムーズに移動できず、ロボットハンドで操作ボタンを正確に押すことも難しかった。同社は、工場の改造やコストをかけたハードウエア改良ではなく、運動制御アルゴリズムを最適化することでこの問題に対応、さらに顧客と共同で工作機械のインターフェースを改良し、デジタル信号で装置を制御できるようにしてロボットの汎用性を向上させた。

賈CEOは、製品を大規模に展開するには、工場をロボットに合わせるのではなく、ロボットを実環境に適応させる必要があると考えた。

過酷な環境を通じてAIをブラッシュアップしたことで、「i7 Pro」はさまざまなシーンで使える汎用ロボットとなった。これまでにCNC加工やフレキシブルプリント基板、光モジュールなどの製造現場に導入されており、将来的にはスマート物流、小売、バイオ医薬品などにも用途を広げる計画だ。

コストパフォーマンスも優れている。「i7 Pro」のハイエンドモデルは価格22万9800元(約530万円)で、50万~60万元(約1200万~1400万円)で販売されている複数のヒューマノイド(人型ロボット)を大幅に下回る。同社の試算では、機械加工分野に導入した場合、1年から1年半ほどで初期投資を回収できるという。主にワークの搬入・搬出、運搬、固定といった反復作業を人に代わって担うことで、製造業で深刻化する労働力不足の緩和に寄与できる。

至簡動力はロボット産業の現状について、新エネルギー車(NEV)の開発が始まった初期段階に似ているとし、業界発展の足かせになっているのは市場の需要ではなく、サプライチェーンの成熟度や生産コスト、製品の信頼性だと指摘する。工場への製品投入を続ければ、収益を得られるだけでなく、データ収集、AIの最適化、生産システムの改良に加え、生産コストの削減も進む良好なサイクルが形成されるという。

事業は順調に進んでいるように見えるが、同社は業界の現状を冷静に捉えている。賈CEOは、エンボディドAIが自動運転よりも格段に難しいことを認めたうえで、業界全体の出荷台数が年間わずか1万台あまりにとどまっており、「0から0.1」という初めの一歩を踏み出した初期段階にあるとの見解を示した。また、各社に次々と資金が投じられるブームが過ぎれば、業界全体が落ち着くと見ている。エンボディドAIの大規模な普及が進むのに伴い、開発競争は概念実証から製品の性能、生産技術、商用化という総合力が試される段階へと移行する見通しだ。

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*1元=約23円で計算しています。

作者:量子位(Wechat公式ID:QbitAI )、田晏林

(翻訳・大谷晶洋)

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