サムスンすら陥落ーー中国で崩れた「外国産=高級」の神話

韓国サムスン電子は世界スマートフォン市場で約20%のシェアを持つ、アンドロイド搭載機の代表格だ。テレビ市場でも約30%を誇り、長年トップに君臨している。しかし、中国では状況が異なる。中国スマートフォン市場でのシェアは1%未満にとどまり、今年4月5日時点でオフライン販売市場におけるシェアはテレビで3.6%、冷蔵庫と洗濯機で0.4%にすぎない。

中国国外から見ると「これほどまでに人気がないのか」と奇妙に思うし、中国国内からは国外でのサムスンの圧倒的な人気に驚くことになる。サムスンは極端な例だが、日本の家電メーカーも同様の苦境に立たされている。

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かつての「高級家電の象徴」が、中国で凋落した現実

ソニーやパナソニック、シャープなどの日本ブランドも、中国市場での苦戦を強いられてきた。2025年時点で、外資系の中で一定の地位を保つサムスン、ソニー、フィリップス、シャープの家電年間合計出荷台数が100万台を下回る水準にまで落ち込んだ。かつて高級家電の象徴ともいえたこれらのブランドが、もはや市場での存在感を失いつつある。

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中国スマートフォン市場でも、サムスンは2013年にシェア20%超という絶頂期から、2017年第4四半期には0.8%にまで暴落。その後もシェアが1%を超えることはなかった。折りたたみスマホでさえシェアはわずか3%であり、フラッグシップ製品のカテゴリーでも影が薄くなっている

2026年5月6日、サムスンは中国本土市場における全ての家電製品販売の停止を正式に発表し、34年間の歴史に終止符を打った。販売中止の対象には、テレビをはじめとしたディスプレイ製品や、エアコンや冷蔵庫や洗濯機といった白物家電が含まれる。ただし、スマートフォンは今後も通常通り販売される。

一方同社は、中国において半導体とストレージの2事業に経営資源を集中する「戦略的スリム化」を進めている。消費者向け市場からは退くものの、中国の家電・スマートフォン産業を支える重要なサプライヤーとしての地位は手放さない構えだ。2025年末時点で北京、上海、天津、蘇州、深セン、西安に16の製造工場と13の研究開発センターを設立し、累計投資額は約567億ドル(約9兆700億円)にもなる。

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同等価格なら中国産を⋯

日本企業だけでなく、サムスンまで中国市場では苦戦した。この理由をさまざまなメディアの分析から読み解いていく。

いくつもの韓国メディアが中国の「愛国消費」現象を挙げている。中国で「国潮」ブームと呼ばれるものだ。ハイアール、ハイセンス、GREEなどのローカル家電企業が中国市場のほとんどを占めている。それだけではない。中国高級家電市場ではハイアール傘下の高級家電ブランド「Casarte」のシェアは高く、特に二槽式モデルなどが印象的な洗濯機においておよそ85%のシェアを占めたことも。これは中国の消費者の「同等価格なら国産を優先する」という傾向が非常に明確であることを示している。

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ただそれには品質とコスパの裏付けもある。スマートフォンを例にとろう。かつてクアルコムの高性能プロセッサ「Snapdragon」はサムスンなど一部のメーカーや中国のハイエンドモデルにのみ搭載されていた。それが「Snapdragon 8+」以降、中国製ミドルレンジにまで広く採用されるようになっている。急速充電技術については、中国メーカーの間で100W急速充電が珍しくなくなり、最高240Wに達するモデルも登場した。さらに、2K解像度ディスプレイも、ある時期まではハイエンド製品の証であったが、今やローエンドモデルにまで普及している。

ハイセンスの液晶テレビ

サムスンは米アップルへの対抗でハイエンドだけの道を選び、早々にミドルレンジ以下の市場を手放した。そこにコスパのいい中国メーカーが台頭したため、サムスンのシェアが下がったという説もある。しかしミドルでもローカル勢は攻勢をかけているわけで、シェアががくんと落ちる時間が早まっただけなのかもしれない。

欧米の基準を重視するサムスンに対し、中国の消費者は特に2010年代はスペック上の数値至上主義だった。同じ価格帯であれば、より高い解像度、より大画面、より大容量のバッテリー、より写真撮影が綺麗といった機能的特徴のある製品が選ばれる。また、ECの普及で価格比較が容易になったことも、コスパに優れた中国ブランドの追い風となった。

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結果として、外資メーカーのプレミアム価格が正当化されにくい環境が作られた。この市場特性に、サムスンをはじめとした外資ブランドは適応できなかった。若い世代を中心に「外国産=高級」という認識が薄れ、むしろ国内ブランドを機能・デザイン・品質の面からも有力な選択肢とみなすようになった。

加えてサムスンはかつて中国で販売部門とマーケティング部門を中心に大規模なリストラを実施し、数千人規模の人員削減が行われた。確かにサムスンがまだ中国でメジャーメーカーだった頃は、サムスン販売店が珍しくなく、かつ店員もたくさんいた。それが今や、サムスン製品を扱うスマートフォンショップすら超少数派となった。

韓国の経済誌が2023年6月に中国各地の12の家電量販店を対象に現地調査を実施したところ、10店舗が「韓国製品を置いていない、または追加入荷の予定がない」と回答し、「地元の消費者が韓国製品を買わない」と答えた店舗が6店舗、「韓国製品は価格が高すぎる」と答えた店舗が5店舗あったという。

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またサプライチェーンの国産化が進み、ディスプレイパネル、半導体チップ、センサー類など、かつて日韓企業に依存していた主要部品の多くが、中国国内で調達可能になった。BOEやハイセンスやTCLなどが開発したディスプレイが技術面でも台頭し、外資ブランドのコスト優位性は完全に失われた。

韓国家電大手のLGも、テレビ事業を手放すのではないかという噂が浮上している。韓国メディアは「LG電子がテレビ事業の売却を含めた見直しについて、ハイセンスと話し合いを行った」と報じた。ただしLGはこの報道に対して、「売却の話し合いをしているという主張は、事実無根である」と公式コメントを発表した。

サムスンやLG、日本ブランドが中国の家電市場で姿を消しつつある背景には、単なる外資ブランドの衰退にとどまらない、構造的な変化がある。外資依存の「世界の工場」から「技術イノベーションの中心」へという移行は、家電産業において最も劇的に現れた。

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この動きは家電にとどまらない。今後は、自動車、半導体、ロボティクスなど他の産業分野でも、同様の転換が起こる可能性が高い。製造業以外ではスーパーやショッピングモールや百貨店まで「脱外資」が進み、国内ブランドを支持する愛国消費の波が広がっている。

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日韓企業にとって、中国市場での経験は貴重な教訓となる。グローバルで戦い続けるには、絶え間ないイノベーションと市場変化への機敏な対応が欠かせない。サムスンの戦略的撤退と事業再構築は、その一つのモデルケースといえよう。

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(文:山谷剛史)

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